目次
ダビンチコードとの関係
まとめ
ダビンチコードとの関係
ダビンチコードの中で何故ロスリン礼拝堂が聖杯の場所として登場したのかというと、それは、ロスリン礼拝堂が、ミステリアスな彫刻で埋め尽くされいるまさに謎だらけの礼拝堂だからです。
1980年代後半からこの礼拝堂は様々な推測により、テンプル騎士団と聖杯、フリーメイソンとの関係に関する理論が語られるようになり、礼拝堂にある地下室には、イエス・キリストのミイラ化した頭、聖杯、テンプル騎士団の宝、またはスコットランドの元の王冠が隠されているなどいろいろなことが書かれるようになりました。
そして、ダン・ブラウンのベストセラー小説「ダ・ヴィンチ・コード」(2003)、そして2006年の映画化で、この推論が際立って取り上げられることになったそうです。残念ながら、中世の歴史家はこれらの推論には実際には根拠がないと結論づけていて、またロスリン礼拝堂の保存会自体も多くを否定しています。
このような推論のもとになったのは、テンプル騎士団やフリーメイソン関わると思われるような様々なシンボルが礼拝堂にあると考えられたからです。
テンプル騎士団とのつながり
テンプル騎士団が聖杯を保存しているという伝説が、ダ・ヴィンチ・コードで聖杯がロスリン礼拝堂にあると考えられた結びつきです。
テンプル騎士団は、中世ヨーロッパで活躍した騎士修道会です。創設は1096年の第1回十字軍後の1119年で、エルサレムへの巡礼に向かう人々を保護するために設立されました。このテンプル騎士団に、ロスリン礼拝堂を建設したウィリアム・セントクレア卿が属していたという話があります。
その根拠とされるシンボルが、セントクレア家の紋章である波型の十字架で、この十字架はたくさん礼拝堂彫られています。そして、テンプル騎士団の紋章に登場する「1頭の馬に乗った2人のライダー」や「悪魔バフォメット」の彫刻もテンプル騎士団を暗示しているとされています。
テンプル騎士団はロスリン礼拝堂が建てられる150年前に消滅していますが、その後もロバート1世が支配するスコットランドで存続し続け、スコットランドを独立に導いたバノックバーンの戦いでのロバート1世の勝利に貢献し、その報酬としてテンプル騎士団に土地と称号を与えたという伝説があります。これがセントクレア家と考えられているのです。
史実としてわかっていることは、セントクレア家はロバート1世に忠実で、 第7代ロスリン男爵であるヘンリー・セントクレア卿は、バノックバーンの戦いで 2人の息子と共に戦いました。 ロバート1世が亡くなったとき、その遺言に従い2人の息子は、ブルース1世の心臓を聖地エルサレムに運ぶ任務を与えられたといわれています。天使がロバート1世の心臓を持っている彫刻がこのシンボルといわれています。
そのため、セントクレア家とテンプル騎士団が結びつく伝説が生まれました。
波型の十字架

テンプル騎士団の紋章である正十字といわれていますが、セントクレア家の紋章です。
1頭の馬に乗った2人のライダー

この彫刻は、ロスリン礼拝堂の説明では、ウィリアム・セントクレア卿が1070年にスコットランド王マスコム・カンモアと結婚するマーガレット王女を護衛している彫刻とされていますので、同じ彫刻ですが、違う解釈があることとなります。
悪魔バフォメット

バフォメットは、テンプル騎士団が異端審問の際に崇拝しているのではないかと疑惑を持たれた異教の神です。黒ミサを司る、山羊の頭を持った悪魔とされます。
フリーメイソンとのつながり
テンプル騎士団と深いつながりがあると言われているのが、フリーメイソン(Freemasonry)で、フリーメイソンの起源はテンプル騎士団という説があります。
フリーメイソンは、13世紀末に誕生した石工ギルドにその起源をたどり、現代まで続く世界最古の秘密結社と言われています。
一説によると、ロスリン礼拝堂を作るために集めたフランス人石工たちとの密約を確かなものにするために作ったギルドがその始まりだと言われ、フリーメイソンはこのロスリン礼拝堂から始まったのだと結論付ける人もいるほどです。
ロスリン礼拝堂の公式サイトに「第16代ロスリン男爵のウィリアムサンクレア卿は、1441年にジェームズ 2世によって付与されて以来、スコットランドのグランドマスター・メイソンの地位がセントクレア家に受け継がれてきたことを認め、スコットランドのフリーメイソンから 1630 年の憲章を付与されました。」とあります。つまり、ロスリン礼拝堂を建設した第11代ロスリン男爵のウィリアム・シンクレア卿がスコットランドのグランドロッジの最初のグランドマスターだったということとなり、グランドマスターの地位が代々セントクレア家に受け継がれてきたことを認められたこととなります。しかし、ロスリン礼拝堂のサイトでは、「この憲章は、セントクレア家をスコットランドで活動する石工の技術の「後援者および保護者」として認めたものであり、象徴性に関して現代のフリーメイソンとは何の関係もありません。」としています。
実際スコットランドには今でも中世から続くさまざまなギルドがあります。以前の記事のディーンビレッジをご紹介した際にも、パン職人のギルドがあることをお話ししました。
ここでいくつかのフリーメイソンのシンボルとされる彫刻とご紹介します。
堕天使

逆さに吊るされ、縄で縛られた堕天使ルシファーは、フリーメイソンの儀式において重要とされています。
柱の間を目隠しをして通る男

フリーメイソンの入会の儀式を描いているといわれます。
定規とコンパス

フリーメイソンのシンボルの定規とコンパスの彫刻といわれています。
五芒星
礼拝堂の天井にあるたくさんの装飾の1つがフリーメイソンのシンボルの五芒星という説があります。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
ロスリン礼拝堂は、私が訪れたことのある礼拝堂の中でも本当に美しいと思いました。そして、無数にある彫刻を見てその意味を理解しようとしているとまさに謎解きとなり、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
この謎だらけの美しい礼拝堂は、多くの芸術家のインスピレーションのもととなり、ダ・ヴィンチ・コードにでてくる数々の伝説が生まれたことに納得します。1回の訪問は90分単位で案内されますが、たくさんの彫刻を探しながらみて、ガイドによるおはなし(入館料に含まれています)を聞くとあっという間に終わってしまいました。
ロスリン礼拝堂はロスリン渓谷の上にあります。礼拝堂訪問のあとに緑深いロスリン城の廃墟を訪れてみてください。ロバート・バーンズなどの芸術家たちのインスピレーションとなった景色が見られます。
エジンバラを訪れる際には、ぜひロスリン礼拝堂を訪れ謎解きをしながら中世に思いを馳せてください。
ロスリン礼拝堂(Rosslyn Chapel)
- 住所:Rosslyn Chapel, Chapel Loan, Roslin, Midlothian, EH25 9PU
- 電話:+44-131 440 2159
- 開館時間:午前9時から午後5時 (日曜日は12時から午後5時)
文・写真・Sachiko/提供元・たびこふれ
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