懸念材料は中国のコロナ感染状況だろう。12月7日、中国は習近平国家主席の「ゼロコロナ」政策から規制緩和に乗り出してきたが、ここで新規感染者が爆発的に急増してきていることだ。中国製ワクチンの効果を疑う声すら聞かれる。米国からワクチン提供の申し出もあったが、中国側はこれまでそれを断っている。
未確認の内部推計によると、中国での大規模な感染で今月最初の3週間に2億4800万人がコロナに感染した。それは人口の18%に当たる。中国南西部の四川省の8100万人の住民、首都北京の2100万人の住民の半分以上が感染しているという。病院は過密状態にあり、多くの火葬場では死体を十分に迅速に火葬することができなくなっているというのだ。専門家の予測によると、数十万人の死者が予想されている。中国当局は感染者数、死者数の公表を中止している。感染の爆発で全容を掌握することが難しくなってきたからだ。中国で数億人の感染者が出てくれば、ウイルスの変異株が生まれる可能性も完全には排除できないから、要注意だ。
新型コロナウイルスの感染起源問題は感染から3年が過ぎた現在もまだ全容解明されていない。中国側が感染初期段階のウイルス・データを公表拒否していることが最大の理由だ。パンデミック3年目に入って、欧米ではパンデミック収束宣言が飛び出してきた一方、中国共産党政権はこれまで「ゼロコロナ」でコロナ根絶で成果を上げたと自負してきたが、感染者が爆発的に増加し、対応に苦慮している。
ちなみに、ドロステン教授は中国の感染状況について、「中国の大きな過ちは、国民、特に高齢者の間でワクチン接種に対する意識がなかったことだ。一方、ドイツやヨーロッパでのワクチン接種キャンペーンは、パンデミックと戦うための決定的なステップだった」(ターゲスシュピーゲル紙)と述べている。
コロナウイルス発生起源問題の全容解明には中国の協力が不可欠だ。ウイルス感染症の戦いは人類の戦いであり、国や体制の壁を越えて連帯しなければならない。これが、世界で27日現在、累計感染者数約6億5990万人、死者数668万8524人を出した中国発のコロナ・パンデミックの教訓だったはずだ。

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編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年12月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。