ロシアのプーチン大統領による核兵器の威嚇は、多くの人に核戦争の恐怖を思い出させました。桁違いの破壊力を持つ核兵器は、人類に想像を絶する災厄をもたらす「絶対兵器」です。

こうした核兵器は、政治学者や国際関係研究者の高い関心の的であり続けました。とりわけアメリカの社会科学者は核兵器の恐怖に縛られても、思考停止することなく、核政治(nuclear politics)の実証研究を積み重ねてきました。

冷戦終焉後、この分野の研究は一時的に停滞しましたが、その後、多くの若い研究者の参入もあり、次々と画期的な理論が構築され、新しい発見がなされています。他方、我が国では「際限もない軍拡競争が起こる」とか、「同盟の信頼性こそが拡大抑止を確実にする」とか、既に用済みとなった半世紀以上前の「お蔵入り」した議論が、「専門家」と言われる人たちの口から、今でも発せられるお寒い状態です。

そこで、この記事では、核兵器が戦争や平和、危機、国家の安全保障や戦略、対外政策等に与える影響を明らかにした重要な基礎文献を紹介します。核政治の文献はあまりにも多いので、古典的なもの以外は、今世紀に入ってから発表された代表的なものに限りました。

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