ネコは本来、狩猟を得意とする肉食動物です。

飼い猫になってもその本能を失うことはないため、セミなどの昆虫やネズミなどの小動物を獲ってきて困った経験をしたことがある飼い主さんも少なくないのではないでしょうか。

獲物となった生き物が何かしらの病気を持っていたり、殺虫剤などに侵されていたりと考えると気が気ではありません。

たとえ何もなかったとしても、普段食べているフードとは異なる食べなれないものですので、消化できなかったり、骨が刺さって怪我をしてしまったりする恐れがあります。

とはいえ、本能である以上、完全に防ぐことは難しいものです。

そんな中、ネコに負担をかけることなくネコの狩猟本能を減らすことができるという研究が注目を集めています。

ネコの狩猟本能に関する調査

小鳥を狙うネコ
credit:Pixabay

ネコの狩猟本能に関する調査はイギリス、エクセター大学のマルチナ・チェケッティ博士らによって行われたものです。

219世帯355匹の飼い猫に対し、持ち帰った獲物の数が以下の対策でどのように変わるか調査されました。

  • 肉をメインとするグレインフリーな食事を与える
  • 遊ぶ時間を増やす
  • 給餌の際にパズルフィーダーを用いる

なお、調査は12週間にわたり行われました。

家飼いに関しては国内外で意識が異なる

狩った獲物を食べるネコ
credit:Pixabay

しかしそもそも我々日本人からすると、12週間、つまりおよそ3ヶ月という短期間にそれほど獲物を獲ってくることがあるのか、という疑問が出てくるでしょう。

実際、家飼いが主流となっている日本では、獲物を獲ってくることがあっても頻繁ではありません。

しかし、日本以外の国々では動物が自由に行動する権利を求める声が強く、自由に外に出られる状態のネコが多くいます。

このため、ネコの狩猟本能による小動物の被害や、ネコ自身の健康被害が大きな問題となっているのです。

この研究はネコの自由を保ちつつ、ネコが周辺環境に迷惑をかけないようにという背景から行われているのですね。

ネコに負担をかけない「肉メインの食事」「飼い主との遊び」「パズルフィーダー」の3つの方法、はたしてネコの狩猟本能にどのような効果があったのでしょうか。

肉メインの食事がネコの狩猟本能を減らす

肉メインの食事(イメージ)
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調査の結果「肉メインの食事」がもっとも狩猟本能を抑える効果が高くなりました。

肉メインの食事を与えたネコは持ち帰る獲物が36%も減少したのです。

ドライフードはネコの栄養を満たすよう設計されていますが、穀物が含まれることも多く、タンパク源として大豆など肉以外のものを使っていることも少なくありません。

元々、狩猟は栄養をとるために行われるものです。

肉食のネコにとって、ドライフードでは得られない栄養が肉にあり、それらが満たされることで狩りへの欲求が減ったのだと考えられます。

遊びを増やすことも有効

羽の玩具で遊ぶネコ
credit:Pixabay

また、もっとも狩猟に近い行為である「飼い主との遊びを増やすこと」も狩猟本能を25%抑えることができました。

飼い主が10~15分遊ぶ時間を増やすだけで効果が得られるということですから、日常に取り入れやすい方法と言えますね。

調査の中では、先端に羽がついた猫じゃらしのような玩具や、ネズミを模した玩具が使われていたようです。

パズルフィーダーは逆効果

パズルフィーダーの参考画像
credit:Amazon

逆にネコが持ち帰る獲物を+49%と大幅に増やしてしまったのがパズルフィーダーです。

もともと肥満防止のため早食いさせないようパズルを解くことでエサにたどり着けるというものですが多くのネコはトレーニング不足でエサにたどり着けず、空腹かつ欲求不満となった結果狩りに向かってしまったのでしょう。

この結果からも、ネコの狩猟本能を抑えるには「栄養」と「狩る欲求=遊び」の両方を満たす必要があることが見て取れます。

ネコが「狩りを失敗するように仕向ける」取り組みも

鳥が危険を感じる配色の首輪「Birdsbesafe」
credit:Birdsbesafe

調査の中では、ネコが狩りを失敗するよう「鳥に見えやすいカラフルで大きな首輪を付ける」「首輪にベルを付ける」という取り組みも行われました。

これらの取り組みは鳥に関しては40%以上減少という大きな効果をもたらしましたが、小動物にはほとんど効果がなかったと言います。

さらに多くのネコが首輪を嫌がったため、ネコのストレスという観点からあまり論文中でも推奨されていませんでした。

ただこの「鳥に見えやすいカラフルで大きな首輪」に関してはすでにBirdsbesafeという名で商品化されているもので、飼いネコが野生動物を食べてしまうという問題の注目度の高さが伺えます。

家飼いが主流の日本でも、実はこういった問題は他人事ではありません。

日本にも特定の人に飼われず外で暮らしているネコは多くいるためです。