ゼレンスキー大統領の決意

アメリカを訪れたゼレンスキー氏はバイデン大統領との会談や議会での演説を通じて思いを伝え、当面の支援継続を取り付けました。なぜ、アメリカだったのでしょうか?欧州大陸のほうがはるかに切迫感がありますが、欧州各国は目立った動きをしません。一時期はロシアと国境を接している国々から悲鳴のような国防方針が数多く聞こえてきましたが、最近は落ち着いているようにも見えます。

アメリカはロシアとの経済関係が完全に遮断されても痛くもかゆくもありません。一方欧州は天然ガスをロシアに頼らない準備を進めますが、歴史的な結びつきはそんなにシンプルではありません。踏み込めない、それが正直なところで、マクロン大統領の融和策、軟弱外交姿勢がその複雑さを物語っています。ではアメリカは何と戦っているのでしょうしょうか?正義だろうと察します。勧善懲悪は日本も好きですが、アメリカ人も大好きなのです。

一方のプーチン大統領。このところ、あちらこちらに動き回っているようですが、その意味は形勢不利故に自らが動く必要に迫られているからでしょうか?また、最近「すべての紛争は外交で終わる」とし、「話し合いをしないのはウクライナだ」と述べています。言葉通りには取りませんが、落としどころを探り始めた気配も見て取れます。次のステージではロシア国土が戦場になる公算があり、そうなればプーチン氏の立場は非常に苦しくなります。故に攻撃の手は緩めないものの、幕引きの機会も考えはじめたようにも感じます。

人のふり見て我がふり直せ…

採用面接をしていたところ、たまたま二人続けて「偉くなりたくない(=ヒラのままがいい)」という方に出会いました。理由を聞いたらマネージャーを見ていて大変そうだからああなりたくない、と。私が会長をやっているNPOの来年の新規理事候補を探していたのですが、見事に振られました。「理事なんてとてもとても」と。傍で見て大変そうだと思ったようで「自分の仕事も十分にできないのにNPOの理事など引き受けられません」と。

悪戦苦闘してもがいている自分の上司を見れば見るほど「俺、いやだよ、あんなの」になるのでしょう。課長職は私の経験でも一番嫌なポジションでした。若手から中堅までの部下を抱え、様々な突き上げがあり、一方で部長や本部長あたりからは業務指示が飛びます。私も課長経験は長かったのですが、ほとんど部下がいなかったのが救いといえば救いでした。

一方、北米の企業の課長は格好いいと思います。もちろん、責任もありますが、かなり権限や主導権を持っているからでしょうか?物事を丸く収めるというより改善し、伸ばそうとし、常に前向きで論理思考が強いのだと思います。日本企業が出来ないわけではないのですが、「でも…」という相反する意見が相次ぐのです。最近思うのは「でも…」を撃破するのが課長の仕事ではないか、つまり論破王はひろゆき氏だけではなく、全ての課長が身につけたらどうかと思います。「ほう、やるねぇ」と格好いい課長なら「私もマネージャーになります!」という上昇志向が生まれそうな気がしますがさてさて。

後記 カナダは10年に一度の大寒波と雪でバンクーバーでも雪かきに追われています。横断歩道の雪をかいていたところ、「君はそこまでやる責任があるのか?」と通行人に聞かれました。私の答えは「責任の問題ではない。誰かがやらないとこの横断歩道を通る人は歩きにくい思いをするでしょう」と。北米では何かにつけて責任の所在を基準に考えます。私はそういう杓子定規なものではなく、もっと普遍的で社会参加者としての良心が大事だと思います。この国の人からそういう気持ちが失せたのだとすれば残念に感じます。北米はいいところもありますが、ダメなところも多いのです。アイデンティティが宙ぶらりんな私だからこそよく見えるのでしょう。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月24日の記事より転載させていただきました。