驚いた。アルゼンチン出身のフランシスコ教皇は18日に国際サッカー連盟(FIFA)主催のサッカー世界選手権(W杯)の決勝戦、フランス対アルゼンチン戦を観戦しなかったというのだ。最初は信じられなかったが、バチカンニュースがフェイクニュースを流すことはないだろうから、教皇は母国アルゼンチンが前回優勝国のフランスと争う決勝戦を本当に見なかったのだろう。

バチカン杯で優勝した小児病院チーム(2022年12月14日、バチカンニュースから)

でも、どうしてか。“ペテロの後継者”ローマ教皇も人間だ。突然、40度の高熱に襲われたのだろうか。サッカーのメッカの南米出身のローマ教皇だ。母国チームが36年ぶりのW杯獲得を目指しているのだから予定を変更してTVの前に座って試合を観戦したとしても神の怒りを呼ぶことはないだろう。

過去の教皇の中には、自国の重要なサッカー試合をぜひとも観戦したいため、教皇庁のプロトコールを変更した教皇がいた。教皇として27年間の長期政権を担当したポーランド出身のヨハネ・パウロ2世だ。教皇に選任された1978年の10月22日、落ち着かなかった。その夜、ASローマとFCボローニヤのサッカー試合がテレビで中継されるからだ。どうしても観戦したかった。そこでパウロ2世はプロトコールを早め、夜テレビ中継が観戦できるように調整したという。大したものだ。ちなみに、同2世はクラクワの子供時代、サッカーが大好きで、ポジションはゴールキーパーだった。

フランシスコ教皇の場合、教皇に選出された直後、新教皇がアルゼンチンのサッカークラブ、サン・ロレンソ(San Lorenzo)のファンだというニュースが流れてきた。クラブのトリコー(ユニフォーム)を抱えて笑うブエノスアイレス大司教(現フランシスコ教皇)の写真が掲載されたほどだ。大司教は単なるファンではなく、同クラブメンバーに登録していたのだ。クラブへの熱意は中途半端ではない。南米はサッカーの王国だ。サッカーを理解できずに人を牧会できない。

そのフランシスコ教皇が母国代表のW杯決勝戦をなぜ観戦しなかったのか。アルゼンチンの新聞「ラ・ナシオン」のバチカン特派員エリザベッタ・ピケ氏の証言によれば、18日の夜、教皇は1990年に聖母マリアに「もうテレビを見ない」という約束をしたという。そして教皇はその約束をこれまで忠実に守り続けているというのだ。