また、植物から抽出したエキスは、薬剤のスクリーニングに応用できるので、薬用植物センターの役割は大きい。国策として薬用植物生産は重要なので、経済安保の一環として、薬用植物の収集・維持・保存・栽培を取り上げて欲しいと訴えたわれわれの願いは一蹴された。安保どころか、われわれがアンポンタン扱いされるような塩対応だった。
この国では多省庁にまたがることはたいていこのような扱いだ。薬物は厚生労働省、植物は農林水産省である上に、タバコの転作などと言うと税収にも大きく影響するので整理がつかない。内閣に直結する健康医療戦略室が、省益の草刈り場だから、国としての大局観がないに等しいのだ。
そして、心ある官僚、国の将来を憂う官僚が絶滅危惧種になりつつある現状は大変だ。気骨のある人は、ごますり役人にとっては目障りに過ぎず、いつの間にかムラ社会から追い出される。かつては、政治家の中に本物をかぎ分ける能力のあった人がいて、正論と気骨を見抜く力があったが、今はこれも絶滅危惧種となっている。学者の世界では国を憂う人など昔から超希少だ。私にはどうする術もないが、2・26事件を起こした将校たちの気持ちがわかるような気がする。
その昔、日本海海戦で『皇国の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ』という名言があったが、現役官僚には、この言葉をかみしめて欲しいものだ。皆さんの奮励努力が日本には必要だ。
「根性」というと「パワハラ」と訴えられる社会は、どこか間違っている。大阪で生きるには「ド根性」必要だったが、それも遠い昔の夢なのか?
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2022年12月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。