著名人と並んで掲載されるため、ブランディング効果がある 取材記事であるため、信用度が高い 取材費は一切かからない

というのが定番の営業トークらしい。商談が進むと、「取材費用は発生しないが、インタビュアー(主に芸能人が担当する)手配や記事執筆、媒体掲載などの費用が発生する」という説明が加わる。額も高額だ。数十万円から、掲載媒体によっては百万円を超えることも。

一方、記事の品質は決して高くない。これは当たり前だろう。取材対象者全員に、同じ質問をぶつける「Q&A形式」だからだ。掲載されているのは、「経歴・仕事を選んだ理由・こだわり・若者に伝えたいこと」など。取材というよりアンケートに近い。通常のインタビュー記事とは、質も量も大きく異なる。

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取材商法記事の問題点

インタビュー記事は、「誰が」「何を」語るかで、品質が決まると言われている。

「著名な人物」が「自分のこと」を語る。多くの人が興味を持つだろう。だが、「無名の人物」が「自分の経歴やこだわり」を語っても、興味を持つ人はほとんどいないはず。だからこそ、「何を」語ってもらうか。語ってもらうための質問、すなわち取材対象者に特化した「オーダーメイド」の質問が必要になる。アンケートのような「既製」の質問では、質の高い記事は望めない。

取材商法の記事は、量の面でも問題がある。

1時間のインタビューを文字起こしすると、私の場合「3万字」超。これを、記事として五分の一から十分の一にまとめる。それでも、取材対象者の魅力を伝えられないことがままある。先に述べた通り、取材商法の記事は、短いものだと300字未満。情報量が少なすぎるのだ。

既成の質問。少ない情報。取材商法の記事は、質・量とも問題があるため、多くの人に読んでもらうことが期待できない。期待できるのは、著名人と並び掲載されるという「ステータス」だ。

記事は「オマケ」と割り切り、「ステータス」を買う、という経営者もいる。しかし、そのステータスも「お金を払えば得られる」ことが知れ渡れば、ステータスではなくなってしまう。

今後増える可能性も

大手PR会社の中には「中小企業など45万社をターゲットとする」と明言しているところがある。今後、経営者に「取材させてください」という営業電話やメールが増えることだろう。

取材商法が出現し10年程度。高い品質の記事や、凝った映像を掲載する企業も現れてきた。だが、「無名の人物」が「自分」を語る、という点では変わらない。