この他にもいろいろあったし、今でもあるが、せっかくの成果にカビが生えるので、愚痴はここまでにして、シンポジウムの最後に行った言葉で締めくくりたい。

「企業が医療現場を知らないままに開発を進めても絶対にうまくいかない。医療現場には、優秀な方は多いが技術的には企業、特に情報系の企業との連携は不可欠だ。そして、いろいろなAI技術を国内で広げるためには、日本医師会という大きな力の協力を得て進めるべきだ。」私が接した日本医師会の方々は、多くの方々が描いているイメージとは全く異なる。

役所よりも、大学の世間を知らない頭でっかちの教授たちよりも、しっかりと、日本の医療の将来を、現場の体験に根差して考えている。特に高齢者医療への問題意識は御用学者よりも、はるかに、はるかに高いのだ。コロナのゴタゴタを見ていても、御用学者の存在が問題となっているのがわかるだろう。

そして、会場では言わなかったが、これに患者グループが参画すれば、日本の医療に革命が起こる。何かを変えて欲しいと永田町や霞が関に訴えても多くの無駄な時間を割くことになると思う。こんな医療にして欲しいと懇願するのではなく、自分が受けたい医療体制を作り上げるために皆で力を合わせることが重要だ。

AIホスピタルプロジェクトの発表を聞いていて、大きな岩が動きつつあると感じた。12チームで動き始めたのだから、100チームが集まれば確実に動く「患者さんにも、医療従事者にもやさしい医療」が!

しかし、情けないことに、今週東京に2回出張しただけで、私の体が悲鳴を上げている。この大きな動きを引っ張っていくリーダーの出現を心から願っている。

編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2022年12月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。