過剰摂取が不健康を作る

しかし、この過剰摂取が不健康を作っている。

筆者の亡くなった祖母は生前、一時的に骨密度が悪かった。しかし、あるテレビ番組を見て旺盛にカルシウムを摂取するようになってしまい、やりすぎた結果、尿路結石で病院に運ばれてしまった。親族の男性は「酒は百薬の長だ」という番組を鵜呑みにして、毎日せっせと酒を飲み続け、気がつけば量が増え、肝障害と高血圧症になった。「牛乳は飲むサプリ」のように考えて、過剰に飲みすぎた主婦は毎日体調不良や肌荒れに悩まされ、健康診断でも引っかかるようになってしまった。

歴史的に見て、人間の体は飢餓に強く作られている。カロリー不足が続けば、自動的に省エネモードに移行することで、飢餓に耐えられるという素晴らしい機能性を有している。しかし戦後、飽食になっていきなり現代人は食べ過ぎる生活にシフトした。この大きな変化に遺伝子も対応しきれておらず、現代人は栄養不足ではなく栄養の過剰摂取が原因の病気に苦しめられるというおかしな状態になっている。これは人体が不足には強くても、過剰摂取には極めて脆弱であることを意味する。

だから本来は「不健康な時は新たにこれを食べましょう」という食べる提案ではなく、「不健康な時は食べすぎをやめましょう」という食べない提案こそ、理想ではないだろうか?さらに特定の食べ物に集中して取るのは良くない。最悪なのがサプリメントのように、通常の食生活では接種が不可能なほどの濃度を短期間で摂取してしまうケースである。サプリメントで不健康になった人を見つけることは簡単である。

だが、テレビ番組はスポンサーにサプリメント会社がついていれば、それについて否定的なことはまずいえない。結果、テレビの健康番組を熱心に見る人は、過剰摂取の恐ろしさに気づくことが難しい構造から抜け出せない。不健康を感じる度にますます解消するために、過剰摂取の負のスパイラルに陥ってしまう。テレビ番組の置かれた構造を変えるのは簡単ではないが、視聴する側のリテラシーを高めて防衛に務めることはその日からできるだろう。だから情報を鵜呑みにせず、多面的に考えることが必要だ。

健康の結論

健康と投資には共通点がある。それはリスクヘッジには分散が効くという点である。

投資は時間、銘柄、国家などを分散することでリスクヘッジになる。全資産日本円だと、円安に見舞われれば含み損を抱えるが、ドルや株、債券やゴールドなど銘柄や投資タイミングなどを分散することでリスクヘッジになる。

栄養も同じで、

短期間で一気に食べない。 早食いをせずよく噛んでゆっくり食べる。 様々な食品をまんべんなく食べる。 調理法にバラエティを持たせる。揚げ物だけ、グリルだけなどではなく、火を通さないローフードや生野菜・生果物など。

こうした時間、食材、調理法などへの分散が、不健康リスクヘッジとして機能するだろう。さらに食べる一方だったり、食べ過ぎると良くないので、適度な運動で消費し、筋肉や骨に還元するように活動をするのが理想的だ。