ファミリーマート(東京都/細見研介社長)は、12月9日、クーガー(東京都/石井敦社長)が開発した人型AIアシスタントを2023年度末までに約5000店舗導入すると発表した。人型AIアシスタントが店長とスーパーバイザー(SV)の業務をサポートし、店舗の運営効率向上につなげるねらいがある。

タブレット端末で情報をワンストップで確認!
ファミリーマートが人型AIアシスタントを導入した理由は、人手不足・人口減社会に対応した店舗運営をサポートするためである。同社執行役員店舗業務企画本部長の中村弘之氏は「コロナ禍で人手不足が顕著になった。それに応じて、店長やSVの業務の負担も増えている。人型AIアシスタントの導入により、彼らへの負荷軽減することが大きな目標」と話す。
クーガーが開発した人型AIアシスタントの「レイチェル」は、音声認識技術やゲームAI技術、膨大なデータを処理する検索技術を搭載している。店長やSVは、iPadなどタブレット端末上のレイチェルに話しかけることで、①商品の発注ポイント、②前日のデータ(客数・売上・廃棄額など)、③未導入商品一覧、④売場ランキング・写真といったデータを入手できる。店長やSVはタブレット端末を持ち、バックヤードや売場で店舗運営に関わる情報を入手する。
クーガーの石井社長によると、人型AIアシスタントを開発した理由は「情報が“頭に入ってきやすい”から」だという。「当社は元来、ゲームAIやキャラクターAIを開発してきた企業。人間は、デバイスから得る情報よりも、ヒトから話しかけられた情報の方が覚えやすい。人型AIアシスタントは仕草や話しかけるトーンなど、生身の人間に酷似しているため、店長やSVも情報を覚えやすく、行動促進にもつながるのではないか」(同)

双方向のコミュニケーションが可能
人型AIアシスタントの最大の特長は、そのコミュニケーション能力にあり、2つの機能に大別される。1つ目は、双方向のコミュニケーションが可能なこと。AIが毎日大量のデータを分析することで、販促策や個店の売れ筋商品の販売状況も確認できる。
たとえば、レイチェルは「売れ筋の『スパムおむすび』の販売が伸長しています。状況の確認をお願いします」といった連絡を、自動的に店長やSVに通知する。さらに、業務のリマインドも可能で、「中華まんセールの販促物の取付は終わりましたか」といった情報も能動的に通知する。中村氏は「業務で埋没しがちなデータや情報を『欲しいタイミングで提供できる』点が強み」だと説明する。
2つ目は「店長・SVの性格に合わせたコミュニケーションが可能」という点だ。人型AIアシスタントを使う前に、店長とSVは性格診断を受ける。レイチェルはその情報をもとに、コミュニケーションの取り方を変えていく。
たとえば、競争意欲の強い人に対しては、「地域内の自店の販売順位を表示します」といった通知を届ける。ほかにも、学習意欲が強い店長・SVには「おむすびの詳細データの新着が届いています」と、新しい知識につながる情報を提示する。承認欲求が強い傾向にある人には「いつも使っていただきありがとうございます。これからも頑張っていきましょう」と、労いの言葉を述べるなど、性格に応じたコミュニケーションをとっていくという。