チベット・ウイグル・香港・台湾をどうする

中国にとってチベット、ウイグル、モンゴルといった少数民族問題は、国家の枠組みを壊しかねない頭痛のタネだ。清朝が終わったときに、本来なら中国は漢民族の国となって、周辺民族はそれぞれ自分たちで将来を選択すべきだったが、清朝の領土を中華民国、ついで、中華人民共和国がそのまま継承してしまった。

したがって、チベットやウイグルが中国に侵略されたといった言い方は国際法的には正しくない。併合したのは18世紀の乾隆帝の時代の清朝である。

また、中国政府が少数民族を差別しているというのも間違いで、むしろ「一人っ子政策」の例外にしたり、大学の優先入学枠を設けたりしてきた。少数民族の言葉でなく、中国語で教育をするという方針には、彼らの中国語の能力が低いままでは高い給与を得る仕事に就けないという事情に対処するためでもある。

しかし、彼ら自身の意向とは関係なく漢民族化を進めるのは、21世紀の価値観として許されない。まして、イスラム教を弾圧し、強制収容所まがいの教育施設に閉じ込めるなど論外だ。

台湾の将来は、併合も独立も、戦争でもしない限り無理だと思う。だとすれば、国際条約で、これまでの国際法の中で前例のない特別の地位にするしかないのではないかと私は考えている。

もともと、毛沢東と蒋介石の二つの政府が両方とも「中国の唯一の正統政府だ」といって長く争い、しかも台湾には北京の政府の支配が及んだことがない特殊な状況なのだから、これまで存在したことのあるいかなる制度でも解決するのは不可能であろう。

私としては、中国のメンツは立てるほうがいいと思っている。欧米はそのあたりに無頓着だが、何しろ中国はメンツの国だ。メンツは立てつつも、国際常識に基づいて民族の自主性や、住民が併合を望まない地域の意向を尊重することなど、日本が主導していくことが本当は最も望ましい。とくに台湾については、少し火の粉を浴びても解決に汗を流す責任も必要もあると思う。

中華人民共和国の行政区分 Wikipediaより