黒坂岳央です。
「お金の不安さえなくなれば絶対に幸せになれるのに」
かつて、筆者はこの言葉を数え切れないほど脳内で反芻していた時期があった。人生の前半はとにかくお金がなかったし、人一倍経済的不安が強烈だった。特にリーマンショック直後の就職難を経験したことで、一時期はトラウマレベルに「お金のない恐怖」が刷り込まれ、「お金さえあれば…」という気持ちが強かった。
だが状況は変わり、とりあえず今はお金の不安はない(決して大富豪というわけではないし、稚拙な自慢のつもりもないが…)。そしてその結果「お金の不安」がなくなった先にある「新しき不安」に直面することを理解した。ここからが人生で最も難しくなる局面の1つだと思っている。
この悩みはおそらく筆者だけでなく、同じような悩みを抱えている人もいると思っている。何らかの気付きになればと思い、記録しておきたい。

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「仕事はお金を稼ぐためにするもの」という時期はある意味、精神的に楽だったかもしれない。若い頃、派遣やアルバイトをする上では、とりあえずボーっとしていても拘束時間中は時給が出た。そのため、「ただ待機しているこの時間も給与が出ている」と実感出来たからだ。仕事の段取りが多少悪くとも、そのせいで少々残業が発生しようともそこまで気にならなかった。むしろ、残業代は割増になるので嬉しいと感じていた時期もあった。
だが、今はそうではない。もちろん、慈善事業ではなくビジネスなので、会社を存続させるためにお客様から代金を受け取って仕事をしている。しかし、「お金を稼ぐために仕事をする」というより「空き時間を有意義に過ごすために仕事をし、ビジネスリソースの制約下においてどれだけパフォーマンスを高められるか?」というゲーム感覚に近い。
そうなると仕事選びの軸は「自分がやりたいと思えるか?楽しいと感じるか?」ということになる。これはお金に困っていた時期には感じなかった悩みだ。「稼げるビジネス」という観点で探すなら、明確な答えがググって出てくるし、それを目指す道のりは分かりやすい。しかし、「自分がやりたいと思える仕事」は自分以外、誰にも分からない。否、自分自身ですら見えないことがほとんどだ。
だから面白そうだと感じたら、とりあえず手を付けてみて、思うようなものでなかったら次の仕事へスイッチする。これを繰り返しながら、自分が楽しめる仕事を自力で見つけていくしかないのである。
お金という分かりやすいリターンではなく、真に心からやりたいと思える仕事を見つけるのが、とても大変なのだ。