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棚上げされた増税論

自民党税調は紛糾を極めたようだ。

それは確かにそうで、そもそもこれから景気浮揚を目指そうかと動き始めた日本経済が、今回の防衛費増額に合わせて冷水を浴びせることになったわけで、特に中小零細企業にとっては怒り心頭だろう。

そもそも岸田総理の心中を勝手に推し量れば、安倍元総理、菅前総理の進めてきたリフレ政策のレガシーに対してやっかみによる現在の財政政策に見えて仕方ない。総理総裁職は政治家であれば誰もが目指す最終目標であり、総理総裁という実質的な日本の舵取りを担うことは、政治家としての夢だろう。

その意味で夢を掴んだ岸田総理は、自分なりのレガシーを作り上げることに固執し過ぎていると思えてならない。

仮に2024年予算以後の増税とは言え、また防衛予算のうちの4乃至5兆円と年換算で1兆円と金額的には大きなもので無いとしても、やはり国民の多くに増税を強いることのリスクはあるだろう。岸田総理にしてみれば、例え痛みを伴うとしても、それが将来に禍根を残すものではないと思ったのだろうか?

今回の増税論に対して最も大きく危惧しているのは、地方の中小零細企業だろう。それでなくてもインボイス制度の導入で逃げ隠れ出来ない状況が生まれることが分かっていて、しかもそれは実質的な増税となる以上、防衛予算の増額は急務であると分かってはいても、いよいよデフレから脱却しなければいけない大事な時期に増税論を語ることそのものも、景気を冷やすことになろう。

その大きな反発の声は、自民党税調にも届いたのか、15日には今回の防衛予算増額に伴う増税は来年の予算審議まで先送りとなった。