私の本である「世界のニュースを日本人は何も知らない」シリーズ最新作「世界のニュースを日本人は何も知らない4 前代未聞の事態に揺らぐ価値観」(ワニブックスPLUS新書)では驚くべき海外の実態を掲載していますが、今回のワールドカップでは各国の本音のようなものがわかりました。

その一つが、ドイツの放送局Weltが放送した、サッカー日本代表の試合に対する番組です。

Oleksii Liskonih/Istock

この放送局はマイナーなテレビ局ではありません。ワールドカップに関する番組も視聴数が多いのです。ところがサッカー日本代表に関する番組の放送は驚くべきものでした。

この番組では、父親がアフリカ系の米兵で、ドイツ人とのダブルであるJimmy Hartwigという元有名サッカー戦中でコメンテーターが、 日本チームに対して、公平な批評をやるどころか、コメント内で「チンチャンチョン」という表現を使ったのです。

これは日本ではピンとこなかった方が多かったようですが、欧州や北米の感覚では、東洋人に対して最低な差別語に該当します。場末のチンピラが叫ぶような言葉です。

それを、放送法の規制下にあるドイツの放送局が流してしまった。しかも、番組の出演者もディレクターもプロデューサーも編成局も誰も止めなかったのです。

そして、番組をなんとYoutubeでも流していました。ドイツ語がわかる日本人の方々が抗議するまで放置されてました。

つまりコンプライアンス、差別禁止法、内部統制、放送法などのプロのはずの制作側が、わざわざそれを流して、ネットで拡散していたのです。

こんな言葉をアメリカやイギリス、カナダの職場で誰かが使ったら、即人事部に呼び出されて懲戒解雇になります。監視カメラやメールに証拠があったら訴訟を起こされて莫大な賠償金を請求されます。

しかしそもそも常識のある人なら、相手が何人であって、見た目がどうでも、相手を傷つけるような言葉は使いません。法律や内規で書かれていなくてもわかります。これは4才児でもわかることです。

しかしドイツのテレビ局はそんな基本的なことすらわかっていなかったのです。これは驚くべきことでしょう。

しかもJimmy Hartwigは、自身がアフリカ系とのダブルであるために、ドイツでは厳しい差別にさらされてきた人で、長年人種差別問題に取り組んできた人なのです。