その総菜は結構遅い時間に行っても案外、売り切れていることはありません。店側の言い分はお勤めの方が遅い時間に来店するので、というものです。遅い時間にどれぐらい売れるのかわかりませんが、廃棄ロスを増やすマイナス要素の方が大きい気もします。また当然、それは材料代と人件費もかかっているわけで経営的にも決して芳しい話ではありません。
当地のある大手スーパーでは中華総菜を取り扱っているのですが、価格は結構高く、かつ、遅い時間に行くとまず何も残っていません。遅いといっても6時半とか7時ぐらいです。厨房はきれいに片づけられて人っ子一人おらず、タイムセールのような割引シールもほとんど見かけません。要はしっかりした価格で売れ残りを出さないことを徹底しているのでしょう。とすれば総菜が欲しければ早い時間に行くしかないわけです。これは不便とも言えるし、合理的ともいうこともできます。
日本経済の話で必ず出るのが総需要が十分ではない、と。私はそうではなくて総供給が多すぎるのだ、と言っています。家電量販店しかり、住宅しかりなのですが、飲食関係が特に多すぎると思うのです。昔の飲食店経営者のポリシーには戦後直後の食糧難を経験した方も多いこともあり、安い値段でしっかり食べてもらいたいという方も多いのだと思います。が、いまはもう戦後ではないのです。
ところで牛丼チェーンが値上げすると報じられると多くの社会的反応が出ます。ところがラーメン店の値上げはほとんど話題にもなりません。今、ラーメンが一杯1000円を超えるのが普通になってきています。コンスタントに値上がりしていると思います。つまり、ラーメン店は経済の動向に沿って値上げできている健全経営だともいえるのです。しかもフードロスが出にくい業態です。

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ということは作り過ぎなければ顧客は値引きしなくても購入するわけです。先日、日本製鉄の話をしました。橋本社長が一番先に手を付けたのは高炉を減らすことでした。つまり、過剰な生産能力が会社を安売り競争に巻き込んだという訳です。これと飲食経営は同じだと思うのです。
売り切れご免でもいい、経営の質を上げ、利益を上げ、従業員の賃金を上げることです。今や安売り競争の時代ではないと思っています。総菜や夜遅くまでやっている飲食店がなくても人々が飢えることはありません。社会を変える、という一歩を踏み出すべきではないでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月13日の記事より転載させていただきました。