飲食店や温泉などに用いられることの多い「まほろば」という言葉には、「素晴らしい場所」や「住みやすい場所」という意味があります。
もともとこの言葉は、奈良県の一部を表現した言葉として使われたのがその始まりだとか。
そこでここでは、「まほろば」という言葉がどういう意味を持っているのか、どこか特定の場所を指しているのかという点について見ていきましょう。
「まほろば」とは

そもそも「まほろば」とはどういう意味や由来を持っているのでしょうか?
「まほろば」の意味
まほろばは、「まほら」という言葉と同じ意味を持ちます。
この「まほら」とは、素晴らしい場所や住みやすい場所を指す言葉です。
もともとこの言葉は、美しい日本とそこに住む人々の心を称えるために用いられたのが始まりです。
現在では、「まほろば」という言葉の響きの美しさから、多くの飲食店や温泉などの名前としても用いられています。
例えば、北海道にある名湯の1つとして知られる登別温泉には、まほろばの名を冠する温泉施設があります。
筆者も何度も訪れているのですが、古き良き日本の心である温泉をまほろばという美しい言葉で表現した素晴らしい温泉です。
「まほろば」の由来
まほろばとは、どういう経緯で生まれた言葉なのでしょうか?
これはもともと「物事が完全であること」などを意味する「まほ(真秀)」に、場所を意味する接尾語「ら」がついて「まほら」が生まれました。
そこから転じて「まほろば」や「まほらま」という言葉になったとされています。
古事記にも出てくる古い言葉「まほろば」

「まほろば」という言葉は古語のひとつであり、古事記にも登場する言葉となっています。
ヤマトタケルの詠んだ歌
「まほろば」は、古事記に登場する英雄のヤマトタケル、彼が望郷の思いを詠んだ歌「思国歌(くにしのひうた)」にも出てくる言葉です。
ヤマトタケルの歌の原文は以下の通りです。
倭は 国の真秀ろば 畳なづく 青垣 山籠れる 倭し 麗し
やまとは くにのまほろば たたなづく あをかき やまごもれる やまとし うるはし
歌の解説
ヤマトタケルが詠んだこの歌は、「大和はこの国の中でも最も素晴らしい地だ。どこまでも続く青垣、山々に囲まれた大和はまこと美しい」という解釈がなされます。
「畳なづく 青垣」は主に盆地の東側一帯に広がる山地を表しています。
その南端にある三輪山がいかに美しい風景を織りなしているかを詠んだ歌となっています。
ヤマトタケルが異郷で亡くなる間際に詠んだとされるこの歌は、故郷である大和の美しさをシンプルに伝えています。
豊かな自然が残る大和盆地を広大で清らかな聖地だと表現した歌となっているのです。