「司法取引」に合意した元秘書室長の証言については、司法取引の当事者という「特有の事情」があり、検察官の意向に沿う危険性があると指摘された。

この判決の意味していることは何だろうか。はっきり言って、人質司法、99%以上有罪の恥知らずの司法制度を日本としては自己否定できないものの、アメリカからの司法批判を心配して、実質「無罪」に近い扱いにしたということだ。

エマニュエル駐日米大使は地裁判決を受け、「法的手続きが終了し、ケリー夫妻が帰国できることに安堵している」「ケリー家にとって長い3年間となったが、この件には区切りがついた」「ケリー家の今後が、喜びと幸福に満ちたものになるよう祈ってやまない」と述べ、ケリー被告の地元テネシー州選出の上院議員を務めるハガティ前駐日大使は、「グレッグは米経済界では決して考えられない状況にさらされてきた」「グレッグは無実だ」と主張し、空港で出迎えるとした。

沖縄の基地問題で、地位協定のドイツ並みへの改定を日本政府は望んでいるが、なかなか実現しそうもない。こんな人質司法を続けている限りは、アメリカ政府が受け入れないのは当然だろう。

リクルート事件でも、それまでとくに悪いことと認識されていなかった未公開株の割り当てという行為を罪に問うて、リクルートという新しいビジネス・モデルの創業者を経済界から追放した。

ホリエモンのライブドアや村上ファンド、さらにはウィニー事件(ファイル共有ソフト「Winny」に絡む著作権法違反を問われたが無罪に)でもまったく同じ様相を見せる。つまり、新しいビジネス・モデルを構築して儲けている企業が誕生して、既得権益にとって脅威になったり怨嗟の的になったりすると、検察は立件することで新しい悪を懲らしめたということにして、それが手柄になると思っているようだ。

出る杭は打たれる日本社会の宿痾はこうして増幅される。こうしたことが繰り返されてきたことが、日本では新しいベンチャーの発展が遅れたり、起業家の社会的地位が毀損されたりと、日本経済低迷の大きな原因になっている。