その中で橋下聖子氏が11月末に「(札幌開催について)非常に厳しいと思う。札幌市や北海道の皆さんに、今回の事件が2030年の大会とは全く別だとは思われていないのが現状であり、そういったことが明確にされないかぎり、なかなか今の支持率から上がっていくのは難しい。1日も早く事件が解明され、新たな誘致のスタートが切れるようにしなければならない」と述べているのです。私はこの記事を目にした時、やや唐突感がある発言だと思ってみていたのですが、多分ですが、橋本氏はその時点で既にIOCから状況を説明されていたのだと思います。6日のIOCの発表で腑に落ちました。

ではIOCが気持ちよく札幌を推挙するにはどうしたらよいか、ですが、二面から考慮する必要があります。一つはいまだ、事件の全容解明に至らない中で、日本の世論が盛り上がるかです。旧皇族の竹田恒和ルートの結論がまだ出ておらず、全体像を解明するにはまだ相当時間がかかり、国民も判断できないのではないかと思います。

もう一つは今回の汚職の原点は元理事の暗躍でしたが、その元理事が勤めていた電通という特殊で非常に政治的でブラックボックスに包まれたこの会社が札幌五輪が開催されることになって再び幅を利かせるのか、という疑念です。つまり、IOCは電通が一切絡まない札幌五輪開催は可能か、という宿題を提示したのだとみています。

私は広告代理店の業界に詳しいわけではありません。ただ、広告代理店上位6位のうち3社が今回の汚職で引っかかっています。とすれば博報堂を中心とした体制で出来るのか、これが課題だろうと思います。

最後に本記事に関してメディアのタイトルが微妙で興味深いものでした。「30年冬季五輪、IOCが決定先送り 宙に浮く札幌」(日経)、「札幌への『逆風』ではなく『配慮』 2030年冬季五輪決定の先送り」(朝日)、「30年冬季五輪、24年決定か 札幌招致に猶予期間、来秋から先送り」(産経)などとなっています。個人的には朝日のタイトルが一番まともな気がします。日経はレベルが低すぎ、産経と東京新聞が24年決定か、と踏み込んだところは評価します。

そもそも冬季五輪は地球温暖化現象もあり、開催できる場所が極めて限定されてきています。今回候補に挙がっている三拠点はその点は安定感がありますが今後、新たな都市が手を上げられるのか、私には大いに疑問が残っています。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月8日の記事より転載させていただきました。