まず最悪なのは晩婚化である。30歳前後で結婚するのが流行っているが、これが社会的な慣行となると、子供はせいぜい1人しか儲けなくなる。社内で男女の仲を取り持つ“仲介サービス”をしている会社がある。私の懇意にしている会社はその事業が評判で、社内に何組もの新婚さんが生まれた。
世の中ではこんな婚活をサポートしている会社は珍しい。ついでに赤ん坊が生まれた時には1人目100万円、2人目200万円、3人目は300万円と報奨金を出すようにしたらどうか。若い人は育児の金銭的な負担を思い浮かべるからだ。第一子を産んだら、2~3年後には早く次の子を産みたいという気にさせることが必要だ。
調べてみると子育てに配慮している地方の自治体は意外に多いが、彼らは宣伝などしない。ひっそりと善行を積み重ねているつもりだが、大事なことは宣伝である。
2005年には1.41だった合計特殊出生率が19年には2.95と、全国一にまで回復した岡山県奈義町の子育て支援策を見てみる。
高校生の就学支援(年額13万5千円) 中学3年までひとり親支援(月額約4万3千円) 在宅育児支援(月額1万5千円) 小中学校の教材費用無償化 アドバイザー配置の「つどいの広場」 一時預かりの子育てサポートや保護者当番制の自主保育、不妊治療費の補助
少子化対策は地域によって千差万別だ。その地域に合った政策というものがあるのだろう。また少子化対策は、政府とは無関係に、個人、会社、団体、親など銘々が勝手に打ち出すものでもある。不確実だがそれが功を奏した時の反響は何十倍にもなる。
(令和4年12月7日付静岡新聞『論壇』より転載)
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屋山 太郎(ややま たろう) 1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数。
編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2022年12月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。