日本代表は素晴らしい活躍をした。予選でW杯覇者だったドイツ、スペインの両チームを撃破したことは日本のサッカー史に残ることは間違いない。クロアチア代表の主将でFIFAの最優秀選手賞にもなったMFルカ・モドリッチは、「日本チームがスペインとドイツの両チームを破った理由が分かった」と吐露したという。日本の場合、やはりチーム力であり、結束力だろう。素早いボールさばきは相手チームを脅かすのに十分だった。
森保一監督は試合後、「選手はよくやってくれた。感謝する、同時に、応援してくれた日本の国民にも感謝したい」と述べていた。PK戦で惜しくも敗れたが、仕方がない。どのスター選手でも大きな舞台でのPKは容易ではない。対フランス戦でPKしたポーランドのFWロベルト・レバンドフスキ―(FCバルセロナ)も1度は失敗していた。ドイツのブンデスリーガで何度も得点王に輝いた最高のFWですら、W杯の舞台でのPKは大きなプレッシャーとなるわけだ。日本の選手の場合、ファンや国民の支援、期待を強く感じるゆえに、さらにプレッシャーとなって日ごろの実力を発揮できなくなるのだろう。
オーストリア国営放送で試合を中継していたヘルベルト・プロハスカ―氏(元オーストリア代表MF)は現役時代、イタリアのセリエAで活躍した選手だが、「練習では簡単に打ててもW杯や欧州選手権では難しい」と語っていた。ロナウドも前回のW杯でPKを失敗した。PKを何度も経験した選手ですらPKでボールをネットに入れることは容易ではないのだ。だからPKで無事ゴールを挙げた選手がその直後、笑顔を見せて喜ぶのは当然のことだ。どの選手にとってもPKは大仕事だからだ。
日本チームはパスワークは素晴らしいが、ゴール前の争いで負けるシーンが多い。190センチ以上の長身選手が必要だ。ゴール前でボールを転がして攻撃するだけではなく、ゴール前でボールを打ち上げてヘッドでネットに入れられる選手が出てくれば、攻撃にも幅が出てくるから、相手チームにとっても脅威となるだろう。地上戦と共に空中戦の強化だ。
チャンネルを変えると、アルペンスキー大会が行われていた。ウィンタースポーツたけなわの中、中東カタールでサッカーのW杯が行われているわけだ。カタールW杯はさまざま批判を受けているが、その大会で世界のサッカー界は確実に新しい時代の夜明けを告げているわけだ。選手の技術力の向上もあるが、やはり1人の天才的な選手はサッカー界をさらに刺激的にしている。それだけに、若手の優秀な選手を抱えながらもGKマヌエル・ノイアー(36)やFW/MFトーマス・ミュラー選手(33)に拘るドイツチームの計画性のなさが否応なく目立った。

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編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年12月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。