私が思ったのは日銀が発行する通貨が全てではない時代が来たらどうするのだろう、という点です。法定通貨の意味とは強制力と国家による価値の保証、この2つなのです。逆に言えば、この2つが代替されれば別に日銀券ではなくてもよいわけです。地域マネーでもベルマークでもよいわけです。日銀の利益は大株主である政府に配当として流れているわけでそのパイプが細るのは都合よくないし、仮に日銀の資産が大きく遺棄された場合、様々な弊害は出てくるかもしれません。
先日イベントに出展して物販をしていたらお客さんがイベントマネー券で払いました。イベントに来た一部のお客さんが一種の地域マネーをもらえたわけです。このマネーはイベント終了後、イベント主催者が現金と交換してくれますので私どものお金はカナダドルという法定通貨に戻ります。
ではイベント運営団体は、法定通貨でもらった入場料やイベントの出展料に対して様々な支払いと共に地域マネー発行分のコストが生じています。これは1地域マネー=1ドルですのでもちろん、収支上なんら影響を及ぼしません。これをもっとグローバル化すると域内が域内通貨で収支がバランスすることも可能になります。強制力と価値の保証は作り出すことは可能なのです。
次に自国以外との取引についてはどうでしょうか?現時点では各中央銀行とも非常に厳しい監視ルールを作っています。例えばワイズという民間業者が行う海外での資金受け取り方法がありますが、最近はちっともワイズではなく、面倒くさく、私も諦めたこともあります。理由はワイズにも当然当局の規制がかかっているからです。
無国籍通貨の金(ゴールド)も一定量以上の取引はきちんと報告しないとダメになっています。もっとも金も物理的に動かすのは大変なのでその点は大したことはありません。では金を担保にした取引はどうでしょうか?この担保という発想を債権債務ではなく、通貨にしてしまうわけです。それが今、世界で議論されているステーブルコイン(暗号資産の一種)の取引であります。私の理解する流れはビットコインとイーサリアムが流通上のインフラとして機能し、そこに無数のコインが存在する、そんな世界です。今は中央銀行と各国政府が対策を施し、双方が追いつ追われつの関係にあります。
当局がそこまで暗号資産に危機感を持っているのは中央銀行は国家の保証をベースに巨額の緩和政策をとっても安全である前提だからです。この前提は遠い将来、絶対なものではないかもしれないと考えています。世の中、担保やベース資産になるものなど、国家や金や暗号資産にかかわらず、企業株式でも不動産でもREITのもつ証券でも規模の大小こそあれど何でも生み出せます。これが今、むくむくと頭をもたげ始めたわけで、中央銀行の絶対性にどこまで依存できるか、これは永遠不変だと決めつけるわけにはいかないでしょう。
もちろん、このストーリーは極端な話です。現実派からすればまた、夢物語を語っていると思われるはずです。しかし中央銀行にも先進国のような立派なところもあればエルサルバドルのようなビットコインを法定通貨にしたところもあるのです。全ての世界が普遍的なルールで守られているわけではない点は頭の隅に置いていてもよいのではないかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月7日の記事より転載させていただきました。