イラン検察が4日、風紀警察を廃止する意向を表明した。このニュースはイラン聖職者体制が2カ月半に及ぶ国民の抗議デモに対して譲歩を示したものと歓迎する声が聞かれる一方、同国内務省が正式に発表するまで喜ぶのは時期尚早と警告する意見と共に、「風紀警察を解体するより、女性のヒジャプ着用義務の廃止を決めるべきだ」という声が出ている。

「憲法実行の責任に関する会議」で演説するライシ大統領(2022年12月3日、イラン大統領府公式サイトから)

イランのクルド系女性マーサー・アミニさん(22歳)が9月13日、テヘランでスカーフをイスラムの服装規定に基づいて着用していなかったとして、風紀警察によって拘束され、刑務所で尋問を受けた後、意識不明に陥り、同月16日、病院で死去したことが報じられると、イラン全土で女性の権利などを要求する抗議デモが広がってきた。それに対し、治安部隊が動員され、強権でデモ参加者を鎮圧。オスロ拠点の非政府組織「イラン・ヒューマン・ライツ」が先月29日公表したところによると、全国的な抗議デモの参加者のうち、少なくとも448人が治安部隊によって殺された」と発表した。また、ヴォルカー・ターク国連人権高等弁務官は先週、抗議デモで子供を含む1万4000人が逮捕されたと述べた。

イラン当局は抗議デモの拡大を「米国、イスラエル、海外居住反体制派イラン人たちの画策」と反発し、強権で抗議デモを抑えてきた。しかし、抗議デモ参加者は増加し、女性の権利回復だけではなく、イスラム聖職者体制の打倒、ハメネイ師の辞任を要求してきている。欧州議会はイランの人権弾圧を批判する非難決議を採択するなど、国際社会のイラン批判は高まってきている。

イラン検察が風紀警察の解体の意向を表明することで、抗議デモ参加者の要求を受け入れる形で譲歩したわけだが、内務省は5日現在、何も発表していない。そのうえ、最高指導者ハメネイ師はイラン検察の意向に関して何もコメントを発表していないことから、抗議デモ参加者も「正式に発表されるまで抗議デモを継続する」意向を明らかにしている。

事例の動向を時間の経過と共にまとめてみる。