そもそも日本国憲法には「自衛権」をめぐる条項がない。憲法9条は、第二次世界大戦時の違法な戦争行為を禁止し、違法な戦争を行うための潜在力(「戦力」)とドクトリン(「交戦権」)を禁止しているだけだ。日本は、それによって大日本帝国軍を解体し、大日本帝国憲法「統治権」「統帥権」の規定を廃止し、国連憲章4条と日本国憲法前文が定める「平和を愛する国」の一つとなった。
このポツダム宣言受諾に伴って導入された措置は、「自衛権の制約」などといった憲法学者の陰謀めいた空想論とは、全く関係がない。単に、「自衛権」の恣意的な濫用を禁止しているだけだ。新しいミサイルを保有すると、「自衛権」から逸脱するとか、憲法の何らかの規定から逸脱するとか、といった話は、根拠のないフィクションでしかない。
ところで、折しも、国民民主党が、連立政権に入るのではないか、というニュースが流れた。当事者は可能性を否定しており、どこまで信憑性があるのか、メディア側の政治的思惑で流れてきたニュースではないのか、よくわからない。
ただ、国民民主党は、野党の中で憲法改正に前向きな政党の一つである。連立云々の話とはかかわりなく、憲法改正に向けた動きの中で、国民民主党が一つの役割を持つことは確実である。そこは重要な点であろう。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、自衛隊を「軍隊」として明確に位置付けることに意欲を持たれている。
私も「国際法に合致した自衛権を行使する軍隊」としての議論を正面から行うべきとの立場です。ただ、国際法上の均衡性の要件を満たす場合であっても「相手国の領土の占領」や「そこにおける占領行政」などは我が国の自衛権の行使としては認めるべきではないと考えています。引き続き議論を深めます。 A90OBsSbsg
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) May 31, 2022
自衛隊が憲法上の「戦力」ではなく、国際法上の「軍隊」であることは、すでに政府答弁でも述べられてきたことである。ところが、「憲法にはいろいろな解釈がある」といった幻惑的な憲法解釈論に持ち込んで、自衛隊が「軍隊」であることを否定しようとするのが、「憲法学通説」なるものの権威をよりどころにしているいわゆる「護憲派」の方々である。
残念ながら、「護憲派」が掲げる「憲法学通説」が、学校教育の教科書から、司法試験・公務員試験まで牛耳ってしまっているため、自衛隊が「軍隊」であることが、一般の国民の間にも浸透していない。そのため、今回の「反撃能力」をめぐる喧騒のように、憲法の条項に何ら根拠がないフィクションが「憲法違反」という漢字四文字で表現される悪弊が横行してしまう。
由々しき事態である。
国民民主党には、自衛隊は「軍隊」であることを明らかにする憲法の文言を確立する改正案で、是非むしろ自民党の背中をたたいて、主導的な立場をとっていただきたい。
そして、「憲法にはいろいろな解釈がある」ので、「憲法学者へのアンケート調査を通じた憲法学者の多数決投票で国政を運営していくべきだ」といったことを主張する方々のイデオロギー闘争術で、国政が停滞することがないように、頑張ってもらいたい。