本日、PCE(Personal Consumption Expenditures、PCEデフレーター)が発表になりました。これは月中に先行発表されるCPI(消費者物価指数)よりも広範な物価についての調査であり、言ってしまえばCPIが簡易型、PCEがフルスペック型の物価指標であります。FOMCでは当然、こちらのフルスペックのPCEを物価判断に使います。ただ、CPIとPCEにはある程度数字の出方に特徴があり、CPIの方がブレが大きいのです。偏差の大きさの違いと言ったほうが正確かもしれません。またCPIとPCEで逆の動きをすることもまずないと言え、11月半ばにでた10月度のCPIでインフレ鎮静化の動きが見て取れればそれをPCEが踏襲するとみて間違いない訳です。ここが相場の判断をするにあたっての読み込み方なのです。
しかしながら最近、本当の相場師がいなくなったのではないか、という気がしているのです。プログラム売買が進んでいるために相場を自分のカラダと頭で判断する癖が無くなってきているのではないか、ということです。その昔、野村證券の田淵節也元会長(当時)と私が短い時間ですが二人っきりで酒を片手に話をするチャンスがありました。「相場がうまく読めないがどうしたらよいだろうか?」と20代の若造の私が聞くと「今はコンピューターが取引するからワシもわからんよ、ワハハハ」と言われたのは1988年だったと思います。それから35年も経てば相場をいじくるファンドマネージャーもコンピューターの言うなりになり、相場観を身に着けていないのではないかと思うのです。
この世の中、プロと称する人たちはどこの世界にもいます。が本当のプロ、プロ中のプロは少ないのです。例えば私が昨年地上げして改築したアパートでは工事の際、既存の基礎のそばに50センチ程度の空洞が見つかりました。私は検査結果、地形、地層、土地の歴史からして防空壕的にお金を隠した人為的な穴の残骸だろう、だから掘り起こして埋め戻せば大丈夫じゃないか、と申し上げたのですが、建設会社がビビりまくってしまい、3か月ぐらい工事が止まったのです。議論を重ねても現場責任者が動かないので「念書をいれるから工事を進めよ」と無理やりやらせたことがあります。この場合、建設会社があらゆる可能性を考えるのは良いのですが、どれがprobable(ありそう)なのか判断できないのです。これではプロではないのです。
結局、何事も人から教えてもらったり書籍から学ぶ以上に体得し、失敗し、様々な考察の中で判断する能力を持つことが大事なのです。最近のさまざまな議論では「ああいえばこう言う、こういえばああ言う」一種の不毛論争をすることもあります。が、結局、誰かが判断しなくてはならないのですが妥協点を探り中庸となり、尖ったものにならなず、「まずまず」の結果で終わることも多いような気がします。
人々は判断し、失敗せよ、そして学ぶ、ということを忘れてはいけないと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月2日の記事より転載させていただきました。