
選挙運動費用収支報告書に添付された領収書の件で会見する岸田首相首相官邸HPより
会長・政治評論家 屋山 太郎
岸田内閣はスタート早々、複数の閣僚辞任が続いて、いかにもヘナチョコ内閣のように見える。辞めた人達はいわば“駆け出し”だが、彼らの準備不足を岸田氏が全く知らなかったのは驚きだ。
中曽根康弘大勲位が首相の時代、移動の車に同乗したことがある。その時、首相が「今日は宮沢(喜一氏、当時の大蔵大臣)はどこにいる?」と尋ねた。ふと用件を思い出したのだろう。「今日は奥さんとゴルフです」と答えたところ、首相は「勿体ないことをするなあ」と慨嘆した。「なぜ勿体ないのですか」と質問したところ、「僕なら休日にカミさんとゴルフはしない。休日は必ず新人を誘う。党内に人脈を作ることになるからね」と言う。
こういうことを普段から行っていたら、役職に任命した新人が選挙違反を起こしていた、などという事件は起こらないだろう。また大臣候補の人柄を知らずに任命する時は、その人物と親しい友人に人格を確かめたという。
そもそも人事に纏わる失敗は痛い結果を招く。デカ過ぎる「大臣辞任」という見出しの中身をよく読んでみると、その理由が「政治資金規正法」違反だったということ程、落胆することはない。金に気をつけさえすれば、辞任は起こらなかったのだ。
中曽根氏は河野派から独立したから、相当無理な金集めをしたのだろう。自ら「総理になるまでは無茶をやったが、それ以降、インチキは一切やっていない」と“自供”したことがある。当時のインチキの中には公共事業を裏から仕切るというのがあったが、田中角栄氏の失脚と共にこれは消えた。「就任以降、インチキはない」というのは、中曽根氏がどうしても遺しておきたい“遺言”だったのだろう。