それが「反撃」であれ、「敵基地攻撃」であれ、国際法上許された自衛権を発動できる要件は、世界共通「武力攻撃が発生する場合」である。日本だけが「着手」云々のドメスティックな法解釈に縛られる道理はない。
通説的な国際法学者の説明を借りれば、「第二次大戦の初め、日本の連合艦隊が北方千島列島海域の湾にひそかに集結していたが、そこにハワイの真珠湾攻撃の命令が東京の軍令部から発令されたとき、そこに『武力攻撃』は存在するにいたっている。(中略)核ミサイル攻撃でも、相手国のミサイル弾基地に攻撃が命令されたときに『武力攻撃』は存在するにいたっている」(高野雄一『国際法概論』弘文堂)。ミサイルが着弾し「すでに日本の国土や人間に被害が発生している」必要はない(同前)。
かりに以上を「先制攻撃」と呼ぶなら、それは国際法上の正当な権利(自衛権)である。
蛇足ながら、『防衛白書』は毎年、「専守防衛」を、以下のとおり、説明してきた。
専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう。(強調は潮)
最低でも、上記下線部の表現を修正しないかぎり、いくら「反撃能力」を保有しようが、相手からの武力攻撃は免れない。このままでは、名実ともの「反撃」(ないし復仇)となる。
拙著最新刊で述べたとおり、国際法上許されているのは「自衛」であり、「反撃」(や復仇)ではない(後者は国連憲章違反)。
この際、国連憲章51条の邦訳から修正しては、どうか。
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