観光で訪れた土地で、図書館に立ち寄ってみたことはありますか?

普段は観光目的で図書館に行くことがない人にも、ぜひ行ってみてほしい個性豊かな図書館は日本に多くあります。その中でも今回は、卓越した建築デザインが国内外から注目を集める「金沢海みらい図書館」をピックアップ。

金沢海みらい図書館が、地元の人だけではなく観光客にもおすすめできる理由に迫ります。神秘的な外観はもちろん、丸窓を活用したやわらかい光や、空調の機能を持った特注の書架などこだわりを感じるディティールにも注目です。

さらに開発で盛り上がりを見せる金沢市西部の観光スポットや、金沢海みらい図書館周辺の飲食店も一緒にご紹介します。

目次
1. 「金沢海みらい図書館」とは?
2. 美しい箱形の建築デザインを外から堪能

1. 「金沢海みらい図書館」とは?

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

金沢駅からバスで20分ほど。白い外壁に丸型の窓が美しい「金沢海みらい図書館」が現れます。

2011年5月、工場跡地に開館した金沢海みらい図書館は、昨年2021年で開館10周年を迎えました。当時、金沢市西部地区の開発に伴って、大きな工場が移転し、空いた土地をどうするかという問題提起がなされました。

このとき、すでに金沢市の複数箇所に図書館があったものの、西部地区にはなかったことから「西部の市民にも身近に本に触れられる場所を」とのことで建設されたのが金沢海みらい図書館です。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

金沢海みらい図書館の大きな特徴は、なんと言っても美しい外観です。

最寄りのバス停から少し歩くと現れる現代建築に、初めて訪れる人はハッとするでしょう。

これまでに、デザインだけではなく施工技術が優秀な建築物に贈られる「BCS賞」や「日本図書館協会建築賞」「日本建築家協会賞」などを受賞。開館から3年後には、その年の作品選集に掲載された作品の中でもとくに学術・技術・芸術の総合的視点からみて優れたものとして「日本建築学会作品選奨」に選出されました。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

金沢市民と金沢を訪れる人々にとって「地域に根ざした図書館」「幅広い世代や地域間の交流促進」を目指す、金沢海みらい図書館。

多くの人が気持ちよく利用できるように、館内は撮影禁止です(今回は特別に許可を頂いて撮影しています)。それでも、この現代建築をひと目見ようと、世界中からたくさんの人々が訪れます。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

照明がない天井や、丸みを帯びたディテールの内装、テクノロジーを駆使した書架など、訪れた人々の好奇心を満たします。

「ここにこれてよかった」と必ず思わせてくれる場所です。

この図書館を訪れた感動に慣れてくると、館内がとても静かなことに気づきます。図書館などの施設の空調は、天井に大きな設備が設置されているのが一般的です。しかし、金沢海みらい図書館では、特注の書架の下から冬は温かい空気が、夏は冷たい空気が出ています。そのため、身体に直接空気が当たったり、耳元でブーンという音が鳴ったりすることを避けられます。

また、この特別な空調設備によって館内が静かなだけではなく、施設全体に空気をまんべんなく行き渡らせています。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

さらに金沢海みらい図書館は金沢に関する書籍や、海の深浅や潮流の方向などを示す海図、金沢産材で作られたベンチなどを通して北陸の地域情報に触れられる点でもおすすめです。

このキュービック型の現代建築の中で、北陸の何を持って帰れるかはあなた次第でしょう。

2. 美しい箱形の建築デザインを外から堪能

「金沢海みらい図書館」の外観は自由に撮影可能です。

無機質なキュービック型の建物に、6,000個に及ぶドットが配置されています。近づいてみると、それが丸型の窓だとわかります。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

白い壁は520枚のパネルで構成されています。

よく見ると、パネルの繋ぎ目と丸窓が被らないようにうまく組み立てられていることがわかるでしょう。

実は、丸窓を避けるように斜めに鉄骨が入っているため、強い耐震強度を誇ります。美しい外観からは想像ができないほど、耐震性でも優れていることはあまり知られていません。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

金沢海みらい図書館は、世界的に有名な2人の建築家、堀場弘さんと工藤和美さんによって設計されました。

堀場さんと工藤さんとの著書『図書館をつくる』では、金沢海みらい図書館の居心地のいいリーディングスペースを作り上げるプロセスが丁寧に書かれています。今すぐには金沢海みらい図書館に行けないという人は、ぜひ『図書館をつくる』を通して、この場所独特の雰囲気をイメージしてみてください。

きっと旅に出たくなるはずです。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

さらに丸窓をよく観察すると、丸の大きさが3種類あることに気がつきます。これは、館内に入る自然光の量を調節するためです。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

丸窓から自然光が直接差し込むと館内が暑くなってしまうため、窓のひとつひとつには奥行きがあります。

窓の奥行きを利用して光が屈折することで、館内にやわらかい光を取り込みます。自然光がじんわり差し込む館内の様子は記事の後半でご紹介します。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

正面入り口付近は、絶好の写真映えスポットです。

丸窓がついた白い壁を前に、モードな雰囲気の写真を撮ることができます。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

また、金沢海みらい図書館の隠れた魅力は、夜になると表情を変えるところです。

「滞在時間が長くないと気付けないので、意外と知らない人が多いのですが、夜も素敵なんです」とお話してくださったのは、館長の安江さんです。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

昼間は、館内のほうが暗いため外から光が差し込みますが、夜は館内のほうが明るいため外に光が漏れます。

光と影が反転する様は、とても神秘的です。

「金沢海みらい図書館」(石川県)~観光できる図書館シリーズ1~
(画像=『たびこふれ』より引用)

陽が落ちてグレーに見える外壁についた丸窓からオレンジ色の光が溢れ出す様子は、滞在時間を伸ばしてでも見る価値があります。

陽が落ちるタイミングを狙って訪れてみるのもいいでしょう(月曜・火曜・木曜・金曜は19時まで、土曜・日曜・祝日は17時まで開館しています)。