ピカピカの島根3号機
島根原子力発電所は島根県の県庁所在地である松江市にある。日本では県庁所在地にある唯一の原子力発電所である。ここには1号機から3号機まである。

島根原子力発電所1号機(右)と2号機(左)出典:Wikipedia
1号機はすでに廃炉にすることが決まっている。2号機(BWR、82万kW)は昨年2021年9月に適合性審査に合格したが、それから1年以上たったいまも再稼働していない。審査を申請したのは2013年のことである。最近の報道では2024年の1月ごろの再稼働を目指しているという。早くてもまだこれから1年以上かかるということである。実に馬鹿げた話である。
そして、3号機はABWR(改良型沸騰水型軽水炉、137.3万kW)である。この原子炉は、完成度90%以上で燃料棒さえ挿荷すればいつでも運転できる。3.11前に燃料棒挿入直前まで行っていたが、そこでフリーズしてしまった。自動車でいえば新車を納車したがガソリンを一滴も入れないままエンジンもかけずにピカピカのまま11年以上が過ぎている。
その為体を招いたのはもちろん田中私案であり、それを継承し続けている現行の規制委員会であり、そのことを放置ないしは無視し続けている政治である。
私は3.11後に島根原子力発電所を3回訪れている。その度に目の当たりにするピッカピカの3号機が哀れでならないと同時に、そのことを放置している政治の無様に腹が立つのである。3号機は稼働に向けて適合性審査の申請はしているが、実際の稼働がはたしていつになるのかは杳(よう)としてしれないのである。
3号機は未だかつて稼働していない。つまり放射化していないので単なる巨大建造物——放射線防護や核物質防護の必要がないのでどこまでも入っていける。3.11の際、炉心溶融によって燃料が溶け落ちたとされる圧力容器の下部にも入っていけるのである。制御棒案内菅が林立する様はスケールが大きいだけでなく、どこかしら感無量である。
島根原子力発電所は、自民党の電力安定供給推進議員連盟の会長である細田博之衆議院議長のお膝元にある。

島根原発3号機の原子炉格納容器の真下産経新聞より
再稼働の重大な問題点は2つある。
適合性審査(安全審査)を通過しても全く動きそうにもない原発がある 審査にもかかっていない原発がある
東電の柏崎刈羽6、7号機、そして東海第二発電所は適合審査を通過してからもう何年も経っている。しかしいずれも再稼働の兆候が全く見られない。どちらも地元の根強い反対がある。そしてその解決のためには、事業者は手詰まりであるから、政治が出て行くほかないのである。
次にこの図を見ていただきたい。適合性審査に〝未申請〟の原子力発電所が8基もあるのである。何故なのか? とりわけ柏崎刈羽の1号機から5号機が未申請とは——異常という他ない。
首都圏は慢性的な電力危機の状態に置かれているが、それは福島県に置かれた原子力発電所とここ柏崎・刈羽の原子力発電所がごっそりと脱落しているからである。その穴埋めを福島県広野町の火力発電所(6基、440万kW)がはたしているが、いずれも石炭火力である。
わが国の電力の安定供給のためにはこの8基の原子力発電所の再稼働に向けた申請を一刻も早く行うべきである。事業者だけでは乗り越えられない問題があるならば、そこは政治の出番なのである。

国内の原子力発電所の新規制基準適合性審査等の対応状況電気事業連合会より