台湾与党・民進党の統一地方選大敗

台湾で11月26日行われた統一地方選で与党の民主進歩党(民進党)は歴史的大敗を喫し、蔡英文総統が責任を取り党主席を辞任すると発表した。統一地方選の結果、これまで民進党所属の市長であった台北市や桃園市など人口の多い台湾の主要4都市の市長がいずれも野党国民党所属の市長となった。民進党の大敗であり衝撃である。

現地からの報道によれば、民進党の大きな敗因は「物価高騰と景気低迷」とされる。国政選挙ではなく地方選であるため住民の生活重視で「台湾有事」の選挙への影響は少なかったのであろう。

統一地方選敗北で党主席の辞任を表明した蔡英文総統NHKより

中国政府の評価と歓迎

中国国営新華社通信は、26日「この結果は平和や安定を求め、良い暮らしをしたいという主流の民意を反映したもの」と評価し歓迎する談話を発表した。仮に台湾住民の主たる関心が「台湾有事」ではなく「生活重視」であるとすれば、あながち誤った評価とは言えないであろう。

問題は、今後、台湾住民が国政選挙や総統選挙などにどのような意思を示すかである。日本の保守系政治家や言論界の間では、「台湾有事」は「日本有事」であるとされ危機感が高まっているが、日本としては、台湾住民の民意と中国の動向を正確に把握し分析する必要がある。

台湾住民が国民党を支持した理由

ここからは筆者の推測であるが、今回の地方選挙で台湾住民が与党の民進党ではなく野党の国民党を支持した理由については、二つの可能性が考えられる。

一つは、いわゆる「台湾有事」への台湾住民の危機感が日本の保守系政治家や言論界が考えるほど切迫していないということである。もう一つは、「危機感」が切迫しているからこそ「台湾侵攻」を回避するため対中強硬の民進党ではなく、対中融和の国民党を支持したということである。