冷静な台湾住民

今回の選挙結果を見る限り、前者の通り、日本の保守系政治家や言論界が考えるほど「台湾有事」に対する台湾住民の危機感は切迫していないと考えられる。

その理由は、

台湾住民は今回の選挙で民進党が主張した「台湾有事」よりも「生活重視」で国民党を支持したこと 台湾住民は中国による軍事演習や軍事圧力には長年心理的に慣れていること、正式の同盟国ではないが「台湾関係法」に基づき「準同盟国」ともいうべき米国の軍事力・抑止力に対する信頼があること 中国政府は台湾の独立は軍事力で阻止すると宣言しているが、台湾住民の86.1%が「現状維持」を望み、「独立」は6.4%にすぎないこと、ちなみに「統一」は1.4%である(2022年8月18日台湾「大陸委員会」世論調査発表) 中国政府も米軍介入の危険性がある「台湾武力統一」よりも、戦わずして勝つ「平和的統一」を指向していること

などである。

日本の対応

このように、今回の統一地方選挙の結果、台湾住民は「台湾有事」に対して冷静であり、危機感は切迫していないと見るべきであろう。

そうだとすれば、日本も今後台湾住民の民意と中国の動向を冷静に分析したうえで、如何なる事態にも対応できるように、「台湾有事」や「尖閣有事」を抑止するに足りる日本の防衛力の一層の強化と米国との同盟関係の強化を図るべきであろう。