札幌五輪組織委員会は東京五輪の縮小版です。その組織委が高橋治之・理事(電通元専務)一人に振り回され、約2億円の贈収賄事件に発展しました。巨大スポーツビジネスを公正に運営するノウハウ、ガバナンス、規範意識も組織委にはないことが立証されました。
組織委の会長は当初、森・元首相(後に橋本氏)で、事務総長は武藤・元財務次官という布陣でした。知名度があっても、森氏、橋本、武藤氏にはスポーツビジネスの経験、知見もなかった。高橋被告にいいようにかき回され、それを監視する理事会の機能、監査機能も落第でした。
それに加え、官製談合事件です。このほうがはるかに影響は大きい。贈収賄事件の時は組織委は被害者だったのが、官製談合事件となると、組織委が国や自治体に対する加害者となる。
事務局には、組織委員会職員が「準公務員」で、入札に関して何をしていいのか、いけないかの規範意識が欠けていたのでしょう。しかも、事務局には受注企業がからの出向者が多数いて、業務を仕切っていたから、談合が犯罪になるという意識がなかったとしか思えません。
電通が日本最大のスポーツビジネスの仕切り役であり、しかも電通に巨額の広告収入、スポンサー収入手数料が入る仕組みに根本的な原因があったのです。政にも官にも自治体にも、大きなスポーツビジネスを執行する力がないということがはっきりしたのです。
事件の解明には時間がかかる。その間、電通、JOC、スポーツ庁は札幌五輪の誘致準備ができるはずはない。本番でも、収支があうように、スポンサー料を集めることが難しいのではないか。
まして2つの事件の主役である電通の容疑が固まれば、少なくとも五輪ビジネスへの参入が禁止されることもあるでしょう。スポーツ関係に限らず、公共的ビジネスへの参入停止という処分もありうる。
電通は解体的な改革、企業体質の抜本的な改革に迫られる。経営トップも責任を問われ、早期の辞任表明が待たれます。社長交代を前提として、電通の解体的な改革に取り組むチームをスタートさせる必要もありましょう。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2022年11月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。