電通と組織委の機能停止で準備不能

東京五輪の贈収賄汚職で区切りがつくかと思っていたら、大会事業の受注を巡る入札談合が発覚し、大会組織委員会までが関与した官製談合事件の疑いが浮上しています。来年に決める冬季五輪開催地(2030年)が札幌になることはもはや絶望的でしょう。

大倉山ジャンプ競技場 Wikipediaより

東京地検特捜部が増収賄事件の捜査に乗り出し、全容がほぼ明かになった段階で、私は2本の記事を書き、札幌冬季五輪を早期断念を決断するよう主張しました。関係者はなにをもたもたしているのだろうと思う。

「五輪汚職の拡大で札幌冬季大会は早期の断念が賢明」(9月18日)、「五輪汚職を反省し、札幌冬季大会の誘致を断念せよ」(11月10日)です。様子を伺ってばかりいて、大きな決断をできないのが日本の特徴です。国も自治体もJOCも大局を見ず優柔不断、意思決定能力に欠ける。

大口のスポンサーの何社かが「札幌五輪からは降りる」とでも意思表明すれば、それの段階で事実上、誘致断念が決着します。スポンサーも国、自治体、JOCの動きを見ているだけで、主体的に動こうとしない。

そうこうするうちに、談合事件の発覚です。東京五輪のテスト大会の入札談合疑惑を巡り、電通など大手広告会社2社と組織委の元幹部の自宅を捜索しました。組織委大会運営局が絡んで、受注調整をした疑いがあり、そうなると官製談合事件となります。

テスト大会といっても、落札すれば本大会の運営も一体で受注できる。談合の疑いのある入札26件のうち、半数以上が「1社応札」だったといいますから、事前に落札業者を決めていたと、当局は見ています。競争制限で大会運営費が増大し、こちらのほうがたちが悪い犯罪です。

高橋容疑者の巨額汚職事件の段階で、札幌冬季五輪の誘致が難しくなっていたところに、組織委と電通などによる官製談合事件となれば、事態はこのほうが深刻です。確実に札幌五輪は誘致不能になります。

東京五輪でも、電通が仕切って、スポンサー、メディアをまとめて誘致運動を盛り上げました。それで市民の五輪支持率を底上げし、IOCにアピールするのです。今回は電通が動けない。

だらだら準備を進めていたら、損失が拡大するばかりです。来春の札幌市長選が誘致派と反対派の泥仕合にならないよう、早期に誘致活動を打ち切るべきです。札幌市が主催者でも、実質的に国費の投入もあるのです。