かつて世界のGDPのトップに君臨してきたものの、1995年以降はGDPが右肩下がりとなっている日本。イノベーションや先端技術力、ユニコーンの数における米中との差は開く一方だという。

企業の強みを新規事業に転換し、成立するためには何が必要なのだろうか。

リブ・コンサルティングにおいて、ベンチャー企業・大手企業の事業開発コンサルティングを行う森一真氏に、日本がイノベーション分野で世界に後れを取った原因と日本に求められる改善策について提言頂く連載企画(第一弾はこちら)。

第二弾となる今回は、日本のイノベーションの拡大に必要な要素ついてご寄稿いただいた。

前回の記事で、日本のイノベーション開発に不足している3つのピース「研究開発」「人材」「オープンイノベーションに向けた取り組み」について解説した。

しかし、それらをいち企業で解決することや、そもそも社会を革新していくようなイノベーション創出は非常に困難である。今回の記事では、企業の強みを新規事業に転換し、成立するための考え方や方策を考えていく。

「新規事業の9割は金にならない」

企業の新規事業の作り方を考える前に、まずは日本の新規事業の実態を把握していこう。定量的に見ていくと、新規事業の立ち上げはここ数年で増加傾向にある。

その背景として「近年、中央官庁・地方自治体共に新規事業開発に活用可能な公的支援の予算を拡大する傾向にあり、支援拡充が図られていること」が挙げられるだろう。

参考:野村総合研究所/ニューノーマル時代の新規事業開発におけるアンケート調査

一方でその立ち上げ数に対して「収益化できている新規事業」が少ないと感じている。新規事業開発に携わる方は「新規事業の9割は金にならない」と耳にしたことはないだろうか。

実際に、中小企業庁が公開している『新事業展開の促進』によると、新規事業展開に成功した企業のうち経常利益率が増加傾向にあると回答した企業は約50%、経常利益率が「横這い」と回答した企業は約30%だという。

つまり、単純計算で考えると「成功している」と考えられる企業は10%~20%程度にとどまっているのだ。中には具体的な事業化検討段階でとん挫した事業も多数あると考えられるため、実際のパーセンテージではもっと低い数値になるだろう。

参考:中小企業庁「第3章 新事業展開の促進」

無理やり事業を立ち上げたとしても、収益化できないと事業は廃止となり、結果的に事業の可能性は失われ利益損失だけが残る結果となる。

DX化で失敗と言われているセブン&アイ・ホールディングス「7Pay」を例に見ると、運営責任者の知識不足といった理由から不正アクセスの報告を受けて1カ月後にはサービスを廃止したことが記憶に新しい。

担当者の経験不足やセキュリティ対策を推進できなかったことが原因と言われているが、新規事業において、事業採算性だけでなく運用面を考えることも重要だと改めて考えさせられた。