新聞論調は「対応が後手後手に回った」、「丁寧な説明が必要だ」、「首相の任命責任が問われる」で、各紙とも同じです。「タガを締め直して国政に臨んでもらいたい」(日経)も、「首相官邸と自民党との連携不足が目立つ」(読売)も、論じるべき次元が低すぎる。

「後手後手」の理由は、身ぎれいな後任を簡単に見つけられないことが大きいでしょう。多くの議員が似たようなことをやっているからです。だから短期間では身元調査を十分にできかねる。

平議員の不祥事はニュース価値は低い。閣僚に就任すると、ニュース価値が一気に高まり。文春砲(週刊文春)などに狙い撃ちされる。だから閣僚のなると、次々に疑惑が発覚する。

朝日新聞は一面トップで、「首相陳謝『任命責任は重い』」との見出しで、首相の発言を伝えました。歴代の首相が閣僚の不祥事のたびに「任命責任は私にある」と発言してきたことか。任命責任を負うとは、具体的に何をするのか。何ができるのか。単なる政治用語でしかない。

政治ジャーナリズムはそこを問わない。首相が「任命責任」を口にすれば、それで首相もジャーナリズムも幕引きをしてきたのです。軽々にそういう空疎な表現をジャーナリズムは使ってはいけない。

野党を含め、政界の人材のレベルが低下していることは間違いない。国際市場で過酷な競争にさらされる民間企業とは違い、政界は日本国内、さらに言えば永田町という狭い世界に生息しています。それが人材の質的な低下を招く大きな一因になっています。

それを監視すべき政治ジャーナリズムも、日本政治を国際比較して論じ、問題を提起する広い視点を持たない。政治家との接点を持ち、維持して情報が途切れないようにすることにエネルギーを注力しています。

岸田首相も、葉梨氏も寺田氏も、後任の松本氏も皆、世襲政治家です。松本氏が「高祖父は初代首相の伊藤博文で、父親は元防衛庁長官、親族に外交官も多い」(日経)。そこまで書いても、世襲政治と小選挙区制がセットになり、政界を目指そうとする人材に対する参入障壁になっている構造的な問題に言及しない。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2022年11月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。