日本の場合は決済手段が多岐にわたっているし、様々な決済会社の端末がレジの前にずらりと並んでいることも多いかと思います。残念ながらそのビジネスのやり方は日本やアジアで進化しているものの当地ではほとんど普及していません。それはクレカ決済に圧倒的な便利さがあり、一定額までは暗証番号も入れず、端末にピッとするだけで瞬時決済だからです。スマホを取り出す手間もないのです。ですが、仮に1.5%のサービス費用がつけばポイントメリットが1.0%程度なのでクレカは使うと余計にコストがかかるということになり、今迄のクレカとポイントの市場制覇の時代は変わるのだろうと予想しています。

そこで出てくるのが暗号資産やデジタルマネーです。つまり社会はより安全で安価な機能性の高い決済手段を求めており、クレカ以外の手段を探し求めるとも言えます。デジタルマネーは中央銀行が進めるプランでもあり、これは将来、普及するでしょう。ただ、日々の生活に於いてそれがデビットカードとどう違うのか、といえば案外差別化しにくいかもしれません。

Suicaのような非接触型カードはどうでしょうか?当地にもバスや電車で使えるものがあります。が、そのインフラは交通機関にほぼ限定されており、日本のような横のつながりも広がりも一切ありません。何故かは知りませんが、読み取りリーダーである端末の普及がなされていないことが主因でしょう。

とすれば一般的な広がりが期待できるのはスマホ型の電子マネーか、暗号資産が仮想通貨に「昇格」した時にその利用価値が見いだせるでしょう。

ここまで長々と書いた理由は世の中のディファクトスタンダード(業界標準)のライフは短くなっており、より新しいものに変わりつつある中、新しい芽を摘み取ってはいけないのだということを言いたかったのです。

FTX社の倒産は予想したとおり、大きな衝撃となり、余波がまだ続いています。しかし私が見る限り今回の事態はエンロン型でリーマン型ではありません。つまりFTX社個体の問題であり、業界全体の体質とは違います。私が同社が倒産した時にビットコインやイーサリアムを揺るがすものではないと申し上げました。実際、ビットコインの相場はいったん下げたのちは崩れていません。

FTX社の倒産の背景は創業者の無知で杜撰な経営と金余りによる投資側の姿勢、FTX社への監視の目が全くなかったことに尽きます。つまり、北米が一番大好きな企業ガバナンスがそっくり抜け落ちていた、それだけの話で暗号資産根源の問題ではないのです。そもそも価値を担保するものがない中で悪い噂が出れば暴落するのは世の常。銀行だって取り付け騒ぎはかつてずいぶんありました。が、その中で体質を改善し監視体制を作って今があるのです。

私が生きているうちに世の中の金融は完全デジタル化になるとみています。当然ながらそこの一翼を担うのが現在の暗号資産でしょう。そしてその頃にはクレカはないかもしれないのです。それぐらい社会は激変するのですから新しいものを怖がってはいけないし、潰してもいけないのです。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年11月23日の記事より転載させていただきました。