米国、オーストラリア、チリ、ドイツ、オーストリア、フランスなどの国とは対照的に、イタリアでは、聖職者による未成年者への性的虐待事件は件数としては少ない。イタリア教会での虐待に関する全国的な報告は、専門家や被害者団体によって長い間求められてきた。今年2月、イタリアの被害者代表者は教会部門での虐待事件に関する独立した調査委員会の設置を要求した。なお、被害者の団体「レテ・ラブソ」は今回の教会の報告書を「非常に制限された内容で、不十分だ」と批判している。

フランシスコ教皇は使徒的手紙の中で、2020年5月末までにイタリア司教会議の全ての教区に「虐待報告センター」を全面的に設置するように要請したが、イタリアの教区で同センターが設置されているのは現在、約70.8%だ。大教区では、その割合はやや高い(84.8%)。既存の教会登録事務所は、「83.3%のセンターは専門家グループによってサポートされている」という。

参考までに、米国教会では聖職者の未成年者への性的虐待件数は数万件といわれ、被害者への賠償金払いで破産する教会も出てきている。欧州のカトリック教国フランスでは昨年10月、1950年から2020年の70年間、少なくとも3000人の聖職者、神父、修道院関係者が約21万6000人の未成年者への性的虐待を行っていたこと、教会関連内の施設での性犯罪件数を加えると、被害者総数は約33万人に上るという報告書が発表されたばかりだ。

イタリア教会でも調査が進めば犠牲者件数が急増することはほぼ間違いない。バチカン教皇庁、ローマ教皇は不都合な事実が暴露されないことを願っているだろう。

なお、11月18日は「児童の性的搾取防止のための国連世界デー」だ。

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編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年11月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。