本題に入る前に「モーセの話」をする。モーセはエジプトで奴隷生活を強いられていた同胞イスラエル民族を解放するためにパロ宮廷生活を捨て神が約束したカナンに向かって60万人の同胞を引き連れて出エジプトする話は旧約聖書の「出エジプト記」に記述されている。モーセの「出エジプト」の話は名優チャールトン・ヘストンが出演した映画「十戒」(1956年公開)になっているから良く知られている。

ベオグラードで開催された移民問題の3国首脳会談(2022年11月16日、オーストリア国営放送のスクリーンショットから)

モーセの「出エジプト」はひょっとしたら人類最初の移民の話だったのかもしれない。ただ、考古学的にはモーセの出エジプトは実証されていない。60万人のイスラエル民族を率いた移民がエジプトを出発してカナンに向かったという話が実話だったら、そのルートには必ずそれを裏付けるなんらかの物証、痕跡が見つかっていなければならないが、考古学者の努力にもかかわらず現在まで発見されていない。

2015年に中東・北アフリカから100万人以上の移民が欧州に殺到したが、彼らの足跡はバルカン・ルートのいたる所に残されている。60万人という当時では考えられない多くのイスラエル人がエジプトの地から紅海を渡ってカナンに入ったことが実際にあった物語だとすれば、何らかの証拠が残っていなければならない。モーセの出エジプトは後世の学者が創作した話ではないか、と解釈する聖書学者もいるほどだ。曰く「イスラエル民族はもともとパレスチナ地域に住んでいた民族だが、神の選民として異教の地エジプトから逃げてきたという話が必要だったから、出エジプトという話が生まれてきた」というのだ。

本題に入る。セルビアの首都ベオグラードで16日、オーストリア、ハンガリー、セルビア3カ国の首脳会談が開催された。3国首脳サミットの目的は、不法移民との戦いで強力な軸を形成し、国境保護のための措置を共同で講じることだった。

カール・ネハンマー首相、セルビアのアレクサンダー・ヴチッチ大統領、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相の3首脳は3国間の移民対策で協力を強化することを目的とした「了解覚書」に署名した。その目的は、不法移民、テロ、組織犯罪と戦うことだ。また、難民と移民の明確な区別だ。

ネハンマー首相は「欧州連合(EU)の移民対策は失敗した」として、難民旅行者を拒否すべきであり、経済難民はジュネーブの難民条約に合致しないと主張。ハンガリーのオルバン首相も、「移民は管理すべきではなく、防止すべきだ。我々はセルビアと運命を共にしている」と指摘、「不法移民の阻止はわれわれが生き残るための問題のため、3国は協力が不可欠だ」と述べている。