「ビジカジ(ビジネスカジュアル)」スタイルの浸透とともに、ビジネスパーソンがブリーフケースの代わりにリュックタイプのバッグを背負う姿を多く目にするようになった。定番のビジネスバッグブランドからアウトドアブランドまでさまざまな種類があるが、その中で根強い人気を誇るのが日本のラゲッジブランド「BRIEFING(ブリーフィング)」だ。

日本で企画し、アメリカの軍需工場で製造する独自のラゲッジブランドとして1998年に生まれたブリーフィング。約四半世紀もの長きにわたって支持される理由はどこにあるのか? 同ブランドを展開するユニオンゲートグループ(東京都/中川有司 代表取締役社長 CEO)の取締役 D2C営業本部長 亀山拓氏に聞いた。

好調のゴルフラインの売上が昨対2倍に!

売上高が対前年比1.6倍!アメリカ生産から始まった「ブリーフィング」好調の秘密とは
(画像=ゴルフライン2022年秋冬コレクション、『DCSオンライン』より引用)

ミル・スペック(アメリカ軍の物資の調達に関する規格)に準拠した強靭な素材「バリスティックナイロン」に、象徴的な赤のステッチ――これがブリーフィングのバッグを象徴する特徴だ。主な購買層は30~40代の男性ビジネスパーソン。3WAYタイプのブリーフケース「NEO TRINITY LINER」が、7万円台と高価格ながら一番の人気だ。 

同ブランドを展開するユニオンゲートグループによると、同社の2021年度の総売上高は、対前期比で約2倍と大幅に増加した。実は、同社は2021年3月にイタリアのラゲッジブランド「Felisi(フェリージ)」を展開する「フィーゴ」の発行済株式を100%取得しており、「2倍」の数字にはそのフェリージの売上分も積み増しされている。しかし、「既存ブランドのブリーフィング、FARO(ファーロ)だけでも約1.6倍に増加した」と取締役 D2C営業本部長 亀山拓氏は語る。

ブリーフィングの好調を牽引したのが、2017年から本格的に展開するゴルフラインだ。「昨今のゴルフ人気にも後押しされ、ゴルフラインだけで売上が約2倍に伸長した」(亀山氏)

主要カテゴリーであるビジネスバッグにおいては、コロナ禍によって店舗営業が制限された影響を受け、2020年度は売上が落ち込んだものの、「翌2021年以降は順調に回復している」という。ワークスタイルが徐々にオフィス通勤に回帰しており、ビジネスバッグを使用するシーンが増えてきたことも復調の要因のようだ。

軍需工場で作られるデイリーユースのバッグ

売上高が対前年比1.6倍!アメリカ生産から始まった「ブリーフィング」好調の秘密とは
(画像=ブリーフィング表参道ヒルズ店、『DCSオンライン』より引用)

「TUMI(トゥミ)」「PORTER(ポーター)」といった定番ブランドに加え、近年ではアウトドアブランドや新興D2Cブランドの参入など、競争が激化している印象があるビジネスバッグ市場。その中にあって、根強い支持を誇るブリーフィングの人気の秘密はどこにあるのだろうか? それには、ブランド誕生の歴史からひも解く必要がある。

ブリーフィングの「産みの親」は、現ユニオンゲートグループ代表取締役社長の中川有司氏。バッグビジネスの勉強でアメリカに渡った中川氏は、現地のある軍需工場を訪れる。そこで出会ったのが、強靭なバリスティックナイロンで作られる、軍需用のバッグだった。「このミリタリーのナイロン素材を使ってデイリーユースのバッグを作りたい」との思いを強くし、帰国。1998年に自社ブランド「ブリーフィング」を立ち上げた。今日に続く「日本で商品企画し、アメリカの軍需工場で製造する」スタイルはこの時に生まれた。

セレクトショップなどでの展開を通じて少しずつブランド認知を高めていく中で、転機となったのが2001年にアメリカで起こった同時多発テロ事件。アメリカの軍需工場が戦地に供給する衣料品などの製造に追われ、ブリーフィングのバッグの製造がストップしてしまった。

ところが、このピンチが、ブランド向上に大きく奏功した。「商品がまったく入荷されない日が続き、お客さまにもご迷惑をおかけしたが、この時に『本当にアメリカの軍需工場で作られているんだ』という“本物感”がお客さまの間に浸透した」(亀山氏)

強靱なミリタリー素材に、実用性と洗練されたデザインを兼ね備えた「日本発・メイドインUSA」のラゲッジブランドとして、「ブリーフィング」の名前は広く知れ渡っていった。