「ぽっちゃり女子」のためのファッション情報誌「la farfa(ラ・ファーファ)」が2022年7月に開設したECモール「la farfa SHOP ONLINE」が好調だ。同誌の人気モデルたちが思い思いにプロデュースしたワンピース、ブラウスなどのアイテムは、軒並み売り切れが続出している。一般的なアパレルブランドが最大でもLLまでのところ、最大で「10L」までを取り揃えるサイズ展開も“大きな”特徴だ。

ニッチなマーケットを対象としたこのユニークなECモールは、同誌を発行する文友舎(東京都)と、アパレル大手ワールド(兵庫県/鈴木信輝社長)の協業によって実現した。その協業にいたる経緯や、好調の秘密、今後の展開について、両社のキーマンに聞いた。

プラスサイズファッションの先駆者

売り切れ続出!「ぽっちゃり女子」のための「ラ・ファーファ」ECモール好調の秘密とは?
(画像=「la farfa」のモデル、『DCSオンライン』より引用)

「プラスサイズ」というファッション用語をご存じだろうか。平均より大きなサイズの、いわゆる「ぽっちゃり女子」を対象としたファッションカテゴリーを指す。

そのプラスサイズファッションの、日本におけるメディアの先駆者が、2013年発刊のラ・ファーファ。主に20代半ば~30代半ばのぽっちゃり女子が読者層のファッション情報誌だ。

ラ・ファーファをめくると、ガーリー系、コンサバ系から最近の流行のY2K(2000年頃に流行ったファッション)まで、バラエティ豊かなファッションスナップが誌面を飾る。特徴的なのが、そのスナップとともにモデルの身長、体重、スリーサイズを明記していること。また、アイテムのサイズ展開も「2L、4L、6L」などとくわしく表記されている。

「一般的な女性ファッション誌が『ぷに子』『マシュマロ女子』などのフレーズとともに一時的にプラスサイズ特集を組むことはあるが、プラスサイズだけに振り切った雑誌は他にはない。また、他誌ではプラスサイズと言ってもLからLLくらいまでだが、本誌では最大10Lまで展開するアイテムを紹介している」

そう語るのは、ラ・ファーファ編集長の高井淳氏。ぽっちゃり女子たちにとって女性ファッション誌のモデルは憧れの存在ではあるが、スリムな体型のモデルが着用する服はほとんどがサイズ展開もなく、とても着られない。そのぽっちゃり女子たちに「自分でもおしゃれを楽しめる」実用的なファッション情報を提供し続けてきたのがラ・ファーファだ。2022年で発刊から9年目を迎え、ぽっちゃり女子たちの声に応えながらニッチなマーケットを牽引し続けてきた。

ワールドとの偶然の出会いで実現したECモール

売り切れ続出!「ぽっちゃり女子」のための「ラ・ファーファ」ECモール好調の秘密とは?
(画像=ワールド ネオエコノミー事業本部 F3ディレクターの針貝泰子氏(左)と同グループの山下直輝氏(右)、『DCSオンライン』より引用)

そのラ・ファーファを出版する文友舎と、アパレル大手・ワールドとの協業によって2022年7月に誕生したのが、プラスサイズ専門のECモール「la farfa SHOP ONLINE」だ。ラ・ファーファ専属のプラスサイズモデルたちが「自分が本当に着たい服」を自らプロデュースし、ワールドが商品化してオンラインで販売する。

ワールドのネオエコノミー事業本部 F3ディレクターの針貝泰子氏は「あるインフルエンサーのファッションブランドを立ち上げたのがラ・ファーファと出会ったきっかけ」と、その経緯を振り返る。

ワールドでは、個人のクリエイターやインフルエンサーのアパレルブランド立ち上げを支援する事業「ワールド・ファッション・クラウド」を展開している。

その事業で立ち上げたブランドの撮影の際、アサインしたプラスサイズモデルがラ・ファーファ専属モデルだった。編集長の高井氏も撮影現場に同行しており、ここでワールドと文友舎の初めての接点が生まれる。

実は、以前から高井氏は「いつかラ・ファーファのオンラインショップを開設したい」との構想を温めていた。

「雑誌も発刊から9年が経ち、良くも悪くも“踊り場”に来ていたので、何か新しい展開を模索していた。そのなかで、周りから『オンラインショップをやってみたら?』という声を頂くことが多かった」(高井氏)

ただ、出版社である自社にはリソースやノウハウがなく、一からECを立ち上げるのは難しい。そこに、たまたま目の前にワールドの人が現れた。高井氏にとっては「願ってもないチャンス」と、迷わず協業を申し出た。

一方、ワールド側も別の悩みを抱えていた。

「『ワールド・ファッション・クラウド』を進めるなかで、インフルエンサー個人との協業でブランドを立ち上げることの難しさを痛感していた」(針貝氏)

そのようなタイミングでのラ・ファーファからの協業提案。社内に話してみたところ「やってみようよ!」と好反応が得られた。

「プラスサイズというニッチなマーケットは、深掘りすればおもしろいビジネスモデルができるのではないか、との期待感が社内にあった」(ワールド・山下直輝氏)

雑誌メディアとしてのラ・ファーファの安定した実績・ブランドに加え、インフルエンサー個人とでなくBtoBで進められる安心感も背中を押し、文友舎とワールドのタッグでラ・ファーファ初のECモールプロジェクトは船出した。