Fowler氏は民主党のMarkey上院議員の了解を得て、なりすましアカウントを作成しました。

 

左が従来からの本物で、説明には「政府、ニュースなどで知られた人」なので認証したなどとあり、右のFowler氏が作った偽物には「「Twitte Blueを購入したから認証された」とあります。

MUSK氏に言わせれば、一人が毎月8ドルも払わなきゃいけないんだから、従来のように一人で何百もの偽アカウントを作って偽情報の拡散などできないだろう、っていう思惑と、みんなが毎月8ドル払ってくれれば、大きな負債を抱えるTwitterの収支改善が進み、経営が安定するという計算だったのでしょう。

ところが、当然のようにユーザーは反発します。「俺たちの投稿こそがコンテンツで、それがあってこそ広告が集まってるのに、金を取るなんてとんでもない」ということです。

その中の有名人が作家のスティーブン・キング氏。当初のMuskの言い値が月20ドルだったので、「とんでもない。止めてやる」と大反発します。これに民主党の人気下院議員のオカシオ・コルテス氏らも同調したところ、アカウントが使えなくなるという騒ぎも。

その中で、Musk氏は従業員7500人中、3700人を首切りし、そこには有害情報を監視、排除するグループも含まれていて、これも批判を呼びます。いくつもの団体が広告主にTwitterへの広告出稿をやめるように働きかけますが、これにMusk氏は「不平を言い続けて結構。でもそれには月8ドルかかる」と開き直りのようなツィートで応えます。

実際に幾つかの有力広告主が出稿を停止し、コメディアンらがなりすましの発言をすると「そんな連中は警告なしにアカウントを永久停止」と応じたり、一方でレイオフしたエンジニアの一部に復帰を働きかけたり・・・・

そしてその間に「グレー」のマークまで登場しました。政治家や、政府機関、報道機関の一部などが対象で、これはTwitterが一方的に認証したものですが、これも多分、Musk氏の一言で消えてしまったよう。

本来、収入の大部分を占めていた広告に関しては、今月初めに任天堂やユニリーバなどを抱える大手広告代理店IPGがブランドに対し、Twitterへの支出を止めるようにアドバイスし、さらに先週には、世界最大の広告代理店のOmnicomも同様の勧告をクライアントに出しました。

このドタバタの最中にTwitter Blueはスタートしましたが、実質1日ほどで停止に追い込まれてしまいます。それでもMusk氏はめげていないよう。Substackで有料メルマガPlatformerを発行するCasey Newton氏によると、同社の契約社員5500人のうち4500人を事前の通告なしで解雇したそうです。

その多くは、有害投稿を監視、排除するモデレーションに当たってスタッフと見られるということで、となればその先は、今月1日の拙ブログで紹介した、南米やアフリカにある安価なモデレーション請負会社に流れることになるのでしょう。

そして、ワシントンポストによれば、先に紹介した民主党の大物で、なりすまし実験にも登場したMarkey議員が「人より利益を優先し、偽情報を止めるより負債を優先している」と指摘、連邦議会の出番を仄めかすような事態になってきました。天才Muskはどんな手を撃つのか。まだしばらくは目が離せません。

編集部より:この記事は島田範正氏のブログ「島田範正のIT徒然ーデジタル社会の落ち穂拾い」2022年11月14日の記事より転載させていただきました。