有価証券性の問題も忘れてはならない。リップル(XRP)が10月に急騰したのは、2年以上続く「XRPは証券か否か」を巡る裁判において早期解決が見えてきたことが1つの要因である。他にも、9月にはイーサリアムがコンセンサスアルゴリズムをコインの保有量が重要になるPoS(Proof of Stake)へと移行したが、SECのゲーリー・ゲンスラー委員長は「融資と非常によく似ており、PoSプロトコルを基盤とする暗号資産はすべて証券である可能性が高い」との考えを示し、イーサリアムが暴落した。証券と見なされればイーサリアムベースのNFTやDeFiへの影響も大きく、XRP以上のインパクトをもたらすだろう。
なお、日本においては暗号資産取引所への上場はすなわち当局の審査を通過しているということであり、コインとして認められたということになる。金融庁は2023年度の税制改正要望で、企業保有の暗号資産に対する課税方法の見直しを提案しており、企業にとってはありがたい動きだ。さらに「新しい資本主義」では暗号資産やブロックチェーン技術を活用するWeb3推進を目指すことが明記されるなど、日本は当分野で世界に先行できる可能性を秘めているとも言える。
これら規制の明確化はデジタルアセット分野の急拡大の証左ともいえよう。事実、世界中で次々と新しい動きが出てきている。世界各国で株式・デリバティブ市場を運営するCboe社は、暗号資産の現物・先物取引所を運営するErisX社の買収を5月に完了し、デジタルアセット分野に参入を果たした。9月には米金融企業らによりデジタルアセット取引所が設立されている。米セキュリタイズ社のようなSTやNFTといったデジタル証券の管理に特化した会社の設立も相次いでいる。また米投資銀行ゴールドマン・サックス社は暗号資産への投資需要の高まりを受け、急成長を遂げる富裕層向け事業を資産運用部門に統合することでデジタルアセット時代に即した事業モデルへの転換を図っている。
このように世界各国で規制が明確化されていけば、デジタルアセット分野に構造変化がもたらされ、さらなる進化・発展を遂げていくことは間違いない。
編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2022年11月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。