中国にとって国境紛争は狙って起こすもののようです。

米国ノースウェスタン大学で行われた研究によれば、中国がインドに対して起こす国境紛争はランダムに起こる偶発的なものではなく、ゲーム理論にもとづいて中国が勝利するよう戦略的に計画されていたことが判明した、とのこと。

また研究では、紛争頻度の分析から中国が最も重視する4カ所の戦略的重要地点が特定されており、この4カ所は中国が建設した要塞の位置と一致していました。

研究者たちは中国が使用しているゲーム理論を理解することで、より効果的な対処が可能になると述べています。

いったい中国が採用していたゲーム理論とは、いったいどんなものだったのでしょうか?

研究内容の詳細は2022年11月10日に『PLOS ONE』にて公開されています。

中国のインド侵略は偶発的ではなく戦略的に計画されていると判明!

中国のインド侵略は偶発的ではなく戦略的に計画されていると判明!
Credit:Jan-Tino Brethouwer et al . Rising tension in the Himalayas: A geospatial analysis of Chinese border incursions into India (2022) . PLOS ONE

中国とインドの国境をめるぐ紛争はしばしば、偶発的事件がキッカケであると報道されています。

この「偶発的」という表現には「どちらも侵略を起こそうとは思っていなかった」「現場での不幸な事故や勘違いが原因だった」という意味合いが込められています。

私たち日本人にとって中印国境紛争は遠い異国の話しに過ぎないため、報道機関が繰り返す「偶発的」という言葉に、特に違和感を覚えないかもしれません。

ですが侵略を狙っていた側にとって、これほど有利な解釈は存在しません。

実際、過去には多くの国々が「偶発的事件」をキッカケに他国の領土を占領しています。

「偶発的」という解釈がまかり通っている限り、いくら侵略しても「我々には侵略するつもりはなかった」「我々は常に平和と安定を求めている」と言い張ることができるからです。

「表向きにせよ侵略するつもりがなかったと言うなら領土を返してくれるのでは?」と思うかもしれませんが、そうやって侵略された領土は通常2度と帰ってきません

ただ歴史をみれば、偶発的事件が本当に、紛争の原因だった例があるのも事実です。

そのため当事者でもない限り紛争が「偶発的」か「計画的」かの判断はつきにくくなっています

そこで今回、米国のノースウェスタン大学、オランダのデルフト工科大学、おとびオランダ国防アカデミーが協同で研究を行い、中印国境紛争が本当に「偶発的事件」の連続で説明できるかを調べることにしました。

調査にあたっては2006年から2020年までに発生した中国によるインド侵攻のデータが集められ、統計的手法を用いて侵攻パターンの分析が行われました。

結果、中国とインドの国境線は西部から東部にかける長大なものでありながら、中国の侵攻ポイントが特定の13か所に集中していることが判明。

さらにそのなかでも西側の国境地帯「アクサイ・チン地域」にある6カ所は侵攻頻度が激しく、紛争件数の大部分を占めていることが示されました。

そこで研究者たちはこの6カ所にかんして、中国の侵攻パターンの分析を続けました。

結果、中国の侵攻パターンはゲーム理論に従っていることが判明します。

ゲーム理論の目的は、あらゆる戦略的状況を数学の力を使って理解することにあり、ポーカーなどのゲームや経済、戦争の分野では、勝つために最適解を知るために使われています。

これまで行われてきた、中国にとって最適解に近い侵攻パターンが、全て偶然と考えることは非常に難しいと言えるでしょう。

つまり、これまで「偶発的」とされていた「中印国境紛争」の多くは、ゲーム理論に従って計画的に実行されていたのです。

では、そのゲーム理論に従った計画的な紛争とはどういうものなのでしょうか?