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趣味が副業になる時代だからこその難しさ
副業でトラブルが起きる最大の原因とは?

趣味が副業になる時代だからこその難しさ

河野:
当然のことながら、人は仕事だけやって生きているわけではありません。趣味で創作活動やっている人なんてたくさんいるだろうし、最近だと動画配信やSNSをがんばっている人もいるかもしれない。

ただ、いまは趣味の延長でお金を稼げる時代になっているわけですよ。元々趣味だったものが仕事・副業として成立してしまう。「これは趣味だから、事業ではありません」と言ったって、じゃあ趣味を本業にしている人はどうなんだとなりますよね。プロ野球選手が「野球は趣味なので事業じゃありません」と言ったら……。

ぽな:
うっ……! 確かに、そうなると「お金は稼いでいるけど、これは趣味なので事業じゃありません」という理屈は通りにくいように思えてきますね……。

河野:
先ほどの同人活動の話もそうですけど、趣味が副業になる時代だからこそ、トラブルになる場面も増えているのかな、と感じます。

ぽな:
インフルエンサーとか、まさにそうですよね。SNSってもともとプライベートな活動だと思うんですけど、それが仕事としても成立してしまうわけで。

こういった「趣味が結果的に副業になってしまったケース」でも、一応副業として会社に報告した方がいいんでしょうか。バレて問題になるケースもあると思うんですけど。

河野:
これは正直、個別判断でしょうね。たとえばYouTubeとかで顔出しでやっていればいつかバレるでしょうし。一般論としては、会社が知らないところで何かやって困ったことになるくらいなら、先に言っていたほうがいいというのはあると思います。

ぽな:
そうですね。SNSで炎上とかありますもんね。

河野:
炎上はよくありますね。SNSの炎上をきっかけに身元を特定されて会社にバレるといったケースは意外に多いです。絶対身バレしない自信があるなら黙っていても大丈夫なのかもしれませんが……。

副業でトラブルが起きる最大の原因とは?

ぽな:
ここまで先生のお話を伺ってきて、副業の場合、会社絡みのトラブルが一番多いんだな、と感じました。

河野:
そうですね。あとは税金ですかね。確定申告は忘れずに。節税対策もいいですが、やりすぎには注意しましょうということで。

ぽな:
制度のギリギリを攻める節税対策って、国税に目をつけられやすいですもんね。結局、副業収入300万円以下は雑所得にする、というのもその流れですし。

河野:
昔から、こういったグレーな節税対策って問題になりやすいんですよ。

ちなみに、ここまで副業フリーランスとして働くのを前提に話を進めてきましたが、同じ副業でも他所の会社に雇われて働く場合は、労働時間規制や労災の問題が出てきますので、ご注意を。ここでは詳しい説明は省きますが、複数の会社に雇われて働く場合って会社側の手続きがものすごく面倒になるんですよ。

ぽな:
「正社員をやりながら、他の会社でアルバイトをする」みたいなケースですね。私の担当編集が大昔、勤めていた会社に内緒でバイトをしていて、バレて会社と大モメし、最終的には退職したことがあるみたいです。

河野:
それはそうなるでしょうね……。なので、やっぱりちゃんと副業の話は会社に言っておきましょう、という話になってしまうんですよ。トラブルになってからでは遅いので。

ぽな:
それから、副業トラブルといえば、「楽して稼げるカンタン副業」みたいな情報商材をめぐるトラブルがめっちゃ多いらしいです。この間、ニュースにもなっていました。

河野:
そういった詐欺的な商材って、そもそも法的にアウトなんですけどね……。だから、情報商材関係のトラブルって、法律的な面から見れば実は副業特有の問題ではないんですよ。

ただ一方で、副業をめぐってこうしたトラブルが頻発する理由もあります。これは、あえて厳しいことを言うんですが……。副業ワーカーは、どうしても気軽に、気楽にという気持ちで、副業を始める方が多いんです。自分が事業者だという自覚がないから、トラブルに巻き込まれやすいという側面はあると思うんですよ。

ぽな:
たしかに、個人事業主って本質は「ひとり社長」だと思うんですけど、とくに副業の方の場合はお小遣い稼ぎ感覚で参入する人も多い気がしますね……。その結果、トラブルになるケースは、結構見る気がします。

河野:
うん。この手の情報商材って、特定商取引法に引っかかってくることが多いんですけど、この法律って消費者を守ることを目的にしているものなんですね。事業者であれば不合理な判断はしないだろう、という前提で作られているので。だから本来、事業の一環として取引をしている人には適用されないはずなんですよ。

ぽな:
あれ……? じゃあ、これから副業を始める人はとにかく、すでに副業を始めている人やフリーランスとして活動している人がヤバい情報商材に引っかかったとしても、消費者としては守ってもらえないってことでしょうか?

河野:
その可能性もあると思いますね。副業ってけっこう気軽にやれますけど、その本質は「事業」なんです。でも、法律にはそもそも「気軽に事業をする」という発想がないので。そのあたりのズレがトラブルにつながっている部分はあると思いますね。

ぽな:
副業やフリーランスとして働くこと=自分の事業を展開すること……。私のような専業フリーランスにとっても耳の痛い話ではあります。

いまってクラウドソーシングやSNSもありますし、正直誰もが気軽にフリーランスとして働ける環境になっているじゃないですか。その反面、安直に仕事を始めちゃう人もいるというか。実際、案件を引き受けたフリーランスが飛んじゃって……みたいな話もよく聞きます。

河野:
「誰でもすぐ始められる気軽さ」が、副業やフリーランスをめぐるトラブルにつながっているところもあるのかもしれません。

「気軽さ」はもちろん入口としては悪いことではないんですが、本来事業にあたる行為を気軽にやってしまっていいのか、という問題はあると思いますね。