3.死亡率の比較
ワクチン接種群の死亡率とコントロール群(未接種群または過去のデータ)の死亡率を比較することにより検証します。厚労省が主張するように接種後死亡が偶発的なものであるならば、両者の死亡率は、ほぼ同じとなるはずです。
既に厚労省は死亡率の比較による検証を実施しています。しかし、その分析結果は実に奇妙なものでした。出血性脳卒中の死亡率は、コントロール群の25分の1、虚血性心疾患の死亡率は、37分の1だったのです。適切な比較をしているとは私には思えません。バイアスが適切に補正されていないか、あるいは性質の異なる数値を比較している可能性があります。
死亡率の比較の場合は、現在の接種後の死亡発生確率で、統計上で有意な死亡率の上昇となるのか、 事前に検証しておくことが有益です。発生確率が低いために有意な死亡率の上昇とならないのであれば、死亡率の比較は意味がなくなります。
接種後死亡が死亡率に与える影響を調べることは、次のような方法で可能です。予測死亡者数(自然死)プラス接種後死亡者数と、予測死亡者数(自然死)のみとを比較して、死亡率の上昇が有意なものか検証するのです。この比較により、現在の接種後の死亡発生確率により、統計上で有意な死亡率の上昇が生じるかどうかが、はっきりします。
この手法を用いて以前に、接種後死亡の発生確率を30人/100万人接種と仮定して試算してみたことがあります。検定結果では、有意差は認められませんでした。ただし、因果関係がないために有意差がないのではなく、発生確率が低いため有意差がないということです。つまり、因果関係があったとしても、発生確率が低いと有意差なしとなってしまうことが有り得るのです。ちなみに、ファイザー製ワクチンの死亡発生確率は15.8人/100万人接種です。
医学においての立証とは何を意味するか?
医学においての立証は、数学のような厳密な立証を意味しているわけではありません。医学においての立証は、帰無仮説の成立する確率が5%以上かどうかを計算しているだけなのです。
帰無仮説:ワクチン接種により死亡率は上昇しない
この帰無仮説の場合、有意差があれば、帰無仮説は棄却され、「ワクチン接種により死亡率は上昇する」という結論になります。問題は有意差がなかった場合です。「ワクチン接種により死亡率は上昇しない」と結論づけたくなりますが、その結論は統計学的には間違いです。正しくは、有意差がなかった場合は、帰無仮説は棄却も肯定もされないため、「ワクチン接種により死亡率は上昇するかどうかは不明」という結論になります。この問題は、以前に詳しく解説しました。
医療統計学による立証では、発生確率が低い場合に、有意差なしとなり、偶発的と誤って認識されてしまう危険があるわけです。有意差がなく稀な現象だから、問題としない、補償をしないといった考え方には、私は全く同意できません。
4.偶発性の検証
偶発性の検証は、発生確率が低い場合でも適用できる点が優れています。因果関係を立証できる可能性が一番高い方法だと、私は考えています。ただし、この手法の場合、報告バイアスの問題があるため、接種後死亡の報告が完全義務化されている必要があります。厚労省が報告の完全義務化を指示しなかったのは致命的ミスでした。
接種後死亡データの分析より、報告バイアスは接種後9日以内であれば、その関与は軽度である可能性を、私は以前に指摘しました。ただし、報告バイアスを完全に排除するには、マイナンバーを用いた検証が必須です。それが実行できるのは厚労省のみです。
医療関係者においてもあまり認知されていませんが、心筋炎の危険は、偶発性の検証より判明しました。 接種者の「接種1日後~21日後の疾患発生確率」と「接種22日後~42日後の疾患発生確率」との比較より、心筋炎の発症が偶発的でないことが示されたのです。死亡率の比較より偶発性の検証の方が有益であることが、まだ十分に理解されていないと、私は感じています。