3. 経営者が非正規雇用に置き換わる中年男性

続いて、40代、50代の男性労働者の変化も見ていきましょう。

非正規化が進む日本の男性労働者
(画像=図5 有業者数 男性 40代 1997年・2017年
就業構造基本調査 より、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

図5が男性の40代の変化です。

合計人数では918万人から893万人と約25万人減少しています。

自営業主や役員のシェアが小さくなり、非正規職員・従業員のシェアが大きくなっていますね。非正規職員・従業員のシェアは3%から8%へと大幅に増大しています。40代は正規職員・従業員が685万人から692万人とわずかながら増加しています。

どちらかと言えば、自営業主や役員が非正規職員・従業員に置き換わったような変化ですね。

男性 有業者数 40代
1997年→2017年 単位:百万人
9.2 → 8.9 (-0.3) 合計
1.2 → 0.7 (-0.5) 自営業主
0.1 → 0.0 (-0.1) 家族従業者
0.7 → 0.5 (-0.2) 役員
6.9 → 6.9 (+0.0) 正規職員・従業員
0.3 → 0.7 (+0.4) 非正規職員・従業員

非正規化が進む日本の男性労働者
(画像=図6 有業者数 男性 50代 1997年・2017年
就業構造基本調査 より、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

図6が男性の50代の変化です。

労働者数は802万人から726万人へと76万人の減少です。

この世代になると、自営業主や役員の割合も大きくなりますね。1997年には、自営業主と役員で29%のシェアがあったようです。それが2017年には19%に減少していて、代わりに非正規職員・従業員のシェアが4%から9%に増大しています。

この世代は、正規職員・従業員の人数が微減していますが、シェアは67%から72%へと増大しています。

男性 有業者数 50代
1997年→2017年 単位:百万人
8.0 → 7.3 (-0.7) 合計
1.4 → 0.7 (-0.7) 自営業主
0.0 → 0.0 (-0.0) 家族従業者
0.9 → 0.6 (-0.3) 役員
5.3 → 5.2 (-0.1) 正規職員・従業員
0.3 → 0.6 (+0.3) 非正規職員・従業員

40代、50代の中年労働者は、正規雇用が比較的守られているながらも、経営者が減り、その分非正規雇用に置き換わっているような変化になっています。

4. 激増する非正規高齢労働者

最後に60歳以上の高齢労働者についても変化を確認してみましょう。

非正規化が進む日本の男性労働者
(画像=図7 有業者数 男性 60歳以上 1997年・2017年
就業構造基本調査 より、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

図7が男性の60歳以上の変化です。

自営業主や役員のシェアが大きいですね。1997年には自営業主で40%、役員で15%と経営者が55%だったようです。

一方2017年は自営業主が28%、役員が14%で42%です。自営業主のシェア低下が大きいようですが、人数自体はそれほど変化はありません。

正規職員・従業員は人数が増えながらもシェアとしては22%から21%とやや低下している一方、非正規職員・従業員は20%から36%と大幅に増大しています。

男性 有業者数 60歳以上
1997年→2017年 単位:百万人
5.8 → 8.2 (+2.4) 合計
2.3 → 2.3 (-0.0) 自営業主
0.2 → 0.1 (-0.1) 家族従業者
0.9 → 1.1 (+0.2) 役員
1.3 → 1.7 (+0.4) 正規職員・従業員
1.2 → 3.0 (+1.8) 非正規職員・従業員

60歳以上の場合は、人数が大幅に増加している中で、主に非正規雇用が大きく増えています。以前は経営者として事業に携わる割合が大きかったのに比べ、非正規雇用でも働かざるを得ない人が増えているという実態もありそうですね。

今回は、男性労働者の雇用形態別の変化について着目してみました。

若年世代は労働者数が減りながら非正規雇用の割合が増えています。中年世代は労働者数はそこまで減っていませんが、経営者の割合が減り、非正規雇用の割合が増えています。高齢世代は労働者数が大きく増え、主に非正規雇用が増加しています。

いずれにしろ、男性労働者でも非正規雇用の割合が増えているのが特徴と言えそうですね。
その分、若年世代で正規雇用が減っていて、中年世代以上では経営者が減っている傾向にあるようです。

非正規化が進む日本の男性労働者
(画像=図8 平均給与 男性
民間給与実態統計調査、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

非正規雇用は一般に低所得な傾向ですし、正規雇用や経営者は所得が高い傾向です。(参考記事: 非正規社員という働き方)

このような変化は、男性労働者の低所得化とも密接に関係しているのではないでしょうか?(参考記事: 豊かになれない日本の労働者)

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年7月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。

文・小川製作所/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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