不動産投資は不動産を購入しそれを賃貸して収入を得るもので、長期的な資産形成のための有効な投資方法だ。アパート経営はその一つで、不動産投資を検討する際の有力な選択肢となっている。アパート経営を行うには優良な投資用アパートを見つけ、アパート購入に必要な資金を借り入れ、部屋を賃貸に出して得た収入から借り入れた資金を返済することになる。

現在の日本は超低金利で資金を借りやすい環境で、会社員や公務員で本業の収入があればその信用により、収入に見合った範囲での資金調達は難しくない状況である。またアパートの入居者募集や入居者対応などの管理業務は、賃貸管理会社にまかせれば本業に影響を与えることなくアパート経営を行うことができる。賃貸管理会社への支払いコストは、アパート経営の必要経費として計上すれば良い。

そうなるとアパート経営の成否にとって最も重要となるのは、投資用アパートの選定となる。アパート経営を成功させるためには、収益が高く、入居率が高く、維持管理費用が安く済むようなアパートを見つけ出せるか否かにかかっている。アパートの賃料は株価やFX(外国為替)などと違い激しく変動するわけではないので、優良物件を見つけて購入すれば長期の安定した収益が見込めるのだ。

アパートの物件選びで重要なポイント3つ

アパート経営のための投資用アパートを見極めるポイントは「収益」、「入居率」、「維持管理費用」の3つだ。収益については利回りを計算し、入居率については入居者にとって魅力的な物件を選び、維持管理費の低い物件を選ぶことが大切ということだ。この3つについて説明する。

●収益 利回りが高い物件を選ぼう

まずアパート経営の収益については、物件の利回りを計算して利回りの高い物件を選ぶのが基本だ。この利回りの計算方法として表面利回り(想定利回りともいう)と、実質利回りがある。表面利回りはアパートの賃貸収入を購入価格で割ったもので、実質利回りはアパートの賃貸収入から必要経費を差し引いた額を、アパート購入費用に購入時の諸経費に足した額で割ったものとなる。

例えば10室のアパートを5,000万円で購入し、1室あたり5万円/月で賃貸したとする。この場合の表面利回りは、5万円×12月×10室の600万円を5,000万円で割って12%となる。実質利回りだと必要経費と諸経費を考える必要があるが、必要経費を1室あたり1万円/月と想定し、不動産取得税と登録免許税は不動産評価額に対してそれぞれ3%と2%となるので、アパートの評価額が5,000万円あれば5%の250万円が諸経費となる。この場合の実質利回りは600万円-120万円の480万円を5,250万円で割って約9%となるのだ。

必要経費はいろいろな条件で変わってくるものである。アパートの物件情報として表面利回りが記載されていることが良くあるが、収益をより正確に見るには実質利回りを計算して比較するべきなのだ。

●入居率 ゼロだと収入はゼロに

入居者がいなければ賃貸料はゼロとなり、アパート経営は成り立たない。入居者が物件を決めるのに大切な要素として、そのアパートの立地と物件の魅力、それに入居者を募集する広告力がある。投資用アパートを探す時には入居者の立場になって、物件の立地や間取り・築年数などをチェックしなければならない。

なかでも立地は最も重要で、日本全体としては人口減少が続いていますが、例えば発展が続いている東京23区内で駅まで徒歩10分以内の様な物件は多くの入居者希望者がチェックするはずなので、入居リスクが少なく入居率はぐんと高くなる。

●維持管理費用 現地チェックで正確に見積もろう

最後にアパートの状態によっては、維持管理費用がかさむ場合があるので注意が必要だ。例えば築年数が経過したアパートだと雨漏りや水漏れ、亀裂・腐食・カビなど色々な不具合が発生する可能性があるため、重要事項説明書に記載されている事項は細かくチェックすることが必要だ。しかし書面だけでは状態が分からないこともあるので、真剣に購入を考える物件であれば、その物件を現地で細かくチェックすることは必須となる。

重要事項説明書などの書面に記載されていない不具合がある場合は、売り主に連絡し対応を求めることになるが、記載され説明を受けていればその不具合も含めた契約とみなされるので注意しなければならない。物件の状態によっては、補修費用を多めに見込んで収支計画を立てることも必要となる。

また物件の構造によっても維持管理費用は変わってくるので、留意しておきたい。建物の構造には、木造・鉄骨造・RC造(鉄筋コンクリート造)・SRC造(鉄筋鉄骨コンクリート造)などがあるが、一般に木造は修理などの維持管理費はRC造・SRC造などに比べて安い。なお法定耐用年数は木造が22年、RC造・SRC造は47年なので、賃貸後にアパートの転売を考えている場合は、木造の方が築年数の観点では価格が下がりやすいので注意が必要だ。

その他、考慮すべきポイント

投資用アパートを選ぶ際には、これまで説明した3つの重要なポイント以外にも注意すべき事項がいくつかある。例えば、家賃相場の変動やアパートの売却価格の変動、物件の環境や災害などは、物件探しの際に考えておくべきなので順に説明する。

まず家賃は変動する可能性があり、周辺の家賃相場が下がった場合や、物件の経年劣化や老朽化によっても家賃が下落する恐れがある。周辺の家賃相場は主に物件の立地に依存し、経年劣化や老朽化は主に築年数に依存するので、物件の立地や築年数は家賃下落を防ぐ上でも重要であることを認識してほしい。

次にアパートの売却を考えている場合、アパートの売却価格は変動するので、アパート価格が上昇すれば良いが、価格が下落する場合には売却により損失が発生する。一定期間賃貸した後にアパートの売却を考えている場合には、周辺アパートの価格相場の状況を調べて売却価格をある程度予測しておくことも必要で、これも物件の立地が重要になる。

また購入したアパートの環境も、入居者が集まらない原因となる場合がある。例えば高速道路やカラオケ・遊技場などの騒音、ゴミ捨て場や排水路の悪臭などの生活環境や、アパートの近くにマンションが建設されてしまい日照問題が起こるなどだ。このような状況では入居率は上がらないため、アパートを購入する前に物件を見て周辺の状況をチェックし、さらに近隣の開発計画を調べておくことは重要だ。

また近隣の住民も広い意味で環境問題となる。例えば近隣住民が夜中に出す大音量の音楽や、逆に過度に音に敏感で音に関してすぐクレームを出す場合などだが、このような場合には、賃貸管理会社経由で穏やかな話し合いにより解決することが大原則となる。このような近隣住民との間の音に関するトラブルで警察に相談しても、すぐに解決する見込みは低い。

アパート経営ではこのようなリスクもできる限り避けたいので、対象物件の退居理由についてもチェックしておくことが賢明だ。また真剣に購入を検討している物件ならば売主や不動産業者だけでなく、可能な限り現地に行って物件周辺の環境を確認することはリスクを避ける上で賢い行動だ。

最後にアパートを含む不動産には地震などの災害リスクがあり、地震に対するリスク回避として新耐震基準が適用された1981年6月1日以降に建設されたアパートを購入するようにするべきだ。それ以前の物件だと「既存不適格」となり耐震性能が劣ることになり、耐震リフォームを行うためにはかなりの出費となってしまうので注意したい。

投資用アパート選びで注意すべきこととは?

アパート経営は長期投資の手段であり、これまで説明したような点に注意して投資用アパートを購入し、資産形成を図るべきものである。しかし節税目的のみで投資用アパートの購入を勧める業者もおり、注意されたい。

あくまでもアパート経営で利益を出し資産を増やすことが最大の目的で、節税はアパート経営を行う上で利益を最大化する方法の一つに過ぎない。アパート経営が黒字にならないようでは、投資する意味がまったくない。

土地を保有しており、そこに新規にアパートを建設する場合もあろうかと思うが、新築なので築年数が問題とならないことを除いては、投資用アパート購入とチェックするポイントは同じとなる。収益や入居率などこれまで説明したポイントをチェックして、建設を検討してもらいたい。

最近問題となっている賃貸アパートのサブリースについては、相手業者の言いなりでローンを組んでアパートを建設し、サブリース契約を結んではいけない。これもここまで説明したポイントをチェックして、物件の建設価格の妥当性や収益・入居率をチェックしてみれば、投資として妥当かどうかの判断がつくはずだ。

優良物件を見つけることが不動産投資の成功のカギ

アパート経営は投資用アパートを購入するため、比較的高額な投資となるので慎重に検討すべきだ。投資用アパートを購入する際には、優良物件であるか否かを見極めることが投資成功のカギとなる。最も重要なポイントは「収益」「入居率」「維持管理費用」であり、その他のいくつかのポイントも合わせて確認することで優良物件の見極めができるはずだ。

これまで説明した投資用アパートを見極めるためのポイントが、アパート投資の参考になれば幸いだ。

文・ZUU online編集部
 

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