サラリーマンは節税できない、あるいは必要なことは全部会社が行ってくれるので節税の工夫は特に必要ないと考えている人が一部にいる。しかし、実際はサラリーマンでも節税は可能だ。ここでは、その具体的な方法を紹介しよう。
所得税額が決まる仕組み
まず、所得税額はどのように決まるのか説明しておこう。
サラリーマンの給与収入(年収)から所得税額を計算する場合、そこから「給与所得控除」を差し引く。差し引き後の金額を「給与所得」という。
給与所得控除額は年収によって変わり、年収500万円のAさんを想定した場合、【収入金額×20%+44万円】の計算式が適用。そこで、控除額は144万円、給与所得は356万円となる。
その給与所得から、家族の人数や加入している保険などに応じて給与所得から「所得控除」がなされる。
例えば、Aさんに無収入の妻、16歳の子がいる場合、配偶者控除分が38万円、扶養控除分が38万円となり、これに基礎控除として48万円も加わり合計122万円となる。給与所得からこれを引くと234万円となり、これが「課税所得額」となる。
所得税率は課税所得額が高いほど高く設定されており、234万円の場合は10%。その税額から9万7,500円が控除されるので、所得税額は13万6,500円となる。
人によっては、所得税額からさらに「税額控除」という税額を直接差し引く控除を行える。税額控除の対象は配当所得(総合課税扱いにしたもの)や政党などへの寄付金、住宅ローンなどの中の一定額となる。
控除対象として注目したい4つの出費
さて、所得税額を節税するには所得控除や税額控除が増えればよい。節税のために出費を増やすのは本末転倒だが、本来控除されるものをきちんと計上し、同じ目的でお金を使う場合に控除対象となる使い方を選択することで節税できるケースがある。
ここでは控除対象となる出費の例、4選を紹介しよう。これまで年末調整などにより、所得控除で節税してきた人も、念のためチェックしておくことをおすすめする。
ふるさと納税
ふるさと納税分には、所得控除のひとつ「寄附金控除」が適用。寄付なので出費ではあるが、返礼品が豪華な場合は実質的に商品を購入しているのと変わらず、その分が控除対象となると考えれば、これを利用して上手に節税できることになる。
所得税の控除額は、ふるさと納税額から自己負担分2,000円をマイナスした金額となる。住民税にも控除が適用され、それと合わせるとふるさと納税額から自己負担分をマイナスした金額と同じだけ税額が安くなる形となる。
ただし、自己負担分を除く全額が控除対象となるふるさと納税額には上限がある。例えば、先のAさんのケースでは、年収500万円で無収入の妻と16歳の子がいるという条件から4万円が上限となり、自己負担分を除くと3万8,000円が控除額となる。つまり、3万8,000円税金を減らせるということだ。
なお、そのほかの控除を利用している場合は控除額が変わってくるので、この控除額はあくまで目安となる。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoとは、自分が拠出した掛金を運用して資産を形成する年金制度のこと。通常の資産運用よりも税制面で優遇され、掛金分は全額所得控除となる。
ただし、iDeCoの掛金には上限があり、サラリーマンの場合、企業年金がない場合は月額2万3,000円(年27万6,000円)、企業年金がある場合は月額1万2,000円(年14万4,000円)が上限となる。
先のAさんの会社で企業年金がない場合、上限の年27万6,000円までiDeCoの掛金を支払うとすれば、所得税(10%)分と住民税分(10%)で合わせて5万5,200円の節税となる。
生命保険料控除・地震保険料控除
生命保険料のうち、「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」に該当するものは、それぞれ4万円、合わせて12万円を上限として所得税の計算から控除される。住民税は、それぞれ2万8,000円、合わせて7万円が控除の上限となる。
そこで、先のAさんのケースでいうと、最大で所得税を1万2,000円、住民税を7,000円減らすことが可能だ。
一方、地震保険料は、所得税で上限5万円、住民税で上限2万5,000円の控除が可能。Aさんのケースでいうと、最大で所得税を5,000円、住民税で2,500円減らせる。
医療費控除/セルフメディケーション税制
医療費の控除を行う「医療費控除」、あるいは一般用医薬品などの購入費を控除する「セルフメディケーション税制」のどちらかを選択して所得控除を行える。
その年の1月1日から12月31日までの間に、実際に支払った医療費から保険金などで補てんされる金額をマイナスし、さらに10万円をマイナスした場合に残った金額があれば、それが控除額となる。控除額の上限は最高で200万円。
あるいは、セルフメディケーション税制なら、その年の1月1日から12月31日までの間に、1万2,000円を超える部分の医薬品購入費が控除額となる。控除額の上限は最高で8万8,000円。ただし、一定の健康診断や予防接種を受けていることが条件となる。
Aさんのケースでいうと、1年間の医療費が15万円かかった場合、5万円が医療費控除対象となり、所得税と住民税がそれぞれ5,000円ずつ減らせる。
節税額ばかりを気にすると失敗することも
ここまで説明してきたAさんのパターンで節税すると、10万7,500円の節税が可能となる。このうち、ふるさと納税とiDeCoは、より積極的な“攻め”の節税策といえるだろう。
しかし、ふるさと納税で節税のために不要な返礼品を選んだり、iDeCoでハイリスクの投資商品を選び元本割れを招いたりしては本末転倒だ。節税額だけでなく、トータルで納得のいくメリットを得られるよう、よく検討してみてほしい。
文・モリソウイチロウ
【関連記事】
・サラリーマンができる9つの節税対策 医療費控除、住宅ローン控除、扶養控除……
・【初心者向け】ネット証券おすすめランキング|手数料やツールを徹底比較
・1万円以下で買える!米国株(アメリカ株)おすすめの高配当利回りランキングTOP10!