冬虫夏草の最良のパートナー(宿主)を探す実験

通常、冬虫夏草の人工栽培には玄米などの穀物が利用されます。

しかし研究チームは、穀物に寄生した冬虫夏草から得られるコルジセピンの量が非常に少ないことに気づきました。

彼らはその原因が、穀物に含まれるタンパク質量の少なさにあると考えました。

蛾に幼虫に寄生するサナギタケ
Credit:Jose Ramon Pato(Wikipedia)_サナギタケ

そこでコオロギ、カイコのサナギ、ミルワーム、バッタ、コガネムシの幼虫、カブトムシを用いて、自分たちの推測が正しいか確かめることにしました。

今回の実験に利用された冬虫夏草は、チョウ目の幼虫やサナギに寄生するサナギタケ(Cordyceps militaris)であり、上記のそれぞれの昆虫を宿主として2カ月間栽培されました。

(上段)左から、カイコのサナギ、コガネムシの幼虫、ミルワーム、カブトムシ、バッタ、コオロギ、(下段)コルジセピン生産量の比較。カブトムシが一番高い
Credit:Mi Kyeong Lee(Chungbuk National University)et al., Frontiers in Microbiology(2022)

その結果、冬虫夏草はミルワームとカイコのサナギで最も大きく成長しました。

対照的に、コガネムシの幼虫とバッタは最も成長しませんでした。

ところが、「成長レベルが高ければ、コルジセピンの量も多い」というわけではないようです。

実際、最高レベルのコルジセピンが得られたのは、成長レベルがほどほどだったカブトムシだったのです。

カブトムシを宿主にした冬虫夏草は、玄米を宿主にした冬虫夏草の約100倍のコルジセピンを生産していました。

コルジセピン生産のカギは「オレイン酸」だった

実験の結果から、研究チームの推測は外れていると分かりました。

コルジセピン生産のカギは、昆虫のタンパク質含有量ではなく脂肪含有量だったのです。

そして脂肪の中でも、高レベルのオレイン酸がコルジセピン合成に必要だと分かりました。

オレイン酸は、牛肉、オリーブオイル、アーモンドなどの動物性脂肪や植物油に多く含まれる
Credit:Canva

次に研究チームは、オレイン酸を添加したカイコのサナギで冬虫夏草を栽培。

その結果、コルジセピンの生産量を50%増加させることに成功しました。

イ・ミギョン氏は結論として、「冬虫夏草のコルジセピン生産を促進させる秘訣は、オレイン酸含有量の高い昆虫を使用することです」と述べました。

今後は、コルジセピンをより効果的かつ経済的に生産できるようになるでしょう。

将来、昆虫をゾンビ化する冬虫夏草から、がん患者を救う未来の薬が創られるかもしれません。

参考文献
Mushroom that grows on insects could help develop new anti-viral medications and cancer drugs
Researchers grow high-potency medicinal “zombie fungus” in the lab

元論文
Cordyceps mushroom with increased cordycepin content by the cultivation on edible insects