昆虫に寄生する真菌「冬虫夏草」には、抗がん作用や抗炎症作用をもつ「コルジセピン」などの有効成分が含まれています。

しかし研究室で栽培した冬虫夏草からは、十分な量のコルジセピンを得ることができていませんでした。

今回、韓国・忠北大学校(Chungbuk National University)薬学部に所属するイ・ミギョン氏ら研究チームは、冬虫夏草の寄生相手を選別することで、約100倍のコルジセピンを得ることに成功しました。

またコルジセピン生産量を向上させる栄養素も発見できたようです。

研究の詳細は、2022年10月19日付の科学誌『Frontiers in Microbiology』に掲載されています。

昆虫に寄生してゾンビ化する「冬虫夏草」

タランチュラに寄生した冬虫夏草
Credit:Ian Suzuki(Wikipedia)_Ophiocordyceps caloceroides

「冬虫夏草」は、昆虫に寄生してゾンビ化させることで有名な真菌類であり、日本ではCordyceps属全体を指して冬虫夏草と呼ぶことが多いようです。

例えばその一種であるタイワンアリタケ(Cordyceps unilateralisもしくはOphiocordyceps unilateralis)は、アリに寄生して体を乗っ取ることで有名です。

冬虫夏草の一種タイワンアリタケ(Ophiocordyceps unilateralis)、アリに寄生している
Credit:David P. Hughes(Wikipedia)_Ophiocordyceps unilateralis

寄生されたアリはこの冬虫夏草によって全身の制御を奪われますが、脳だけは手つかずのままにされます。

そして冬虫夏草にとって都合の良い場所までゾンビのように連れていかれます。

アリは死亡した後に養分として消費され、冬虫夏草は新たな感染者を生み出すための準備に入ります。

このように冬虫夏草は非常に恐ろしい存在ですが、人間にとって有用な成分をも作り出してくれます。

冬虫夏草は漢方薬として用いられてきた
Credit:Canva

実際、冬虫夏草は古来より中国で漢方薬として利用されており、近年でも世界中の研究者たちが有効成分「コルジセピン」の抗がん作用や抗炎症作用に注目・研究しています。

しかし冬虫夏草の人工栽培は難しく、得られるコルジセピンの量もわずかです。

そこでイ・ミギョン氏ら研究チームは、より多くの有効成分が得られる宿主を探すことにしました。